リクルートが進めるプライベートクラウドの構築プロジェクトは、最大250人が参加する大規模なものになった。プロジェクトマネジメントをいかにスムーズに進めるかが、大きな課題として浮上した。(文中敬称略)

 米谷は案じた末、プロシンクワーク社長の大場京子に協力を仰いだ。大場は米谷と旧知の仲。リクルートで情報システム分野を主に歩み、04年に会社を興して独立、フリーのPMやコンサルタントとして活動している。「小倉を側面から支え、PMのスキルも伝授するには最も適任だった」と米谷は振り返る。

 大場はプロジェクトで「PM進行」と呼ぶ小倉の補佐役を務めることになった。米谷が大場に期待した役割は大きく二つある。一つは、大規模プロジェクトでの進捗管理やチーム編成などに関するスキル移転を図ること。もう一つは米谷が目指す「挑戦をいとわない技術者集団」を作るため、腕を振るってもらうことだ。

「社員と同じ立場で参加を」

 前者と同じくらい米谷が期待したのは後者だ。今回のプロジェクトでは、安定稼働とコスト削減の両立が必要。技術者の積極的な挑戦を促さないと、思うような成果は上がらない。それには「協力会社と自社の技術者が対等な関係で参加することが重要」との持論があった。受発注者の関係を超え、自由に意見を言い合えるような環境があってこそ、技術者の挑戦心を引き出せるというのだ。

 そのために米谷は、協力会社の技術者に成否の責任を負わせない方針も打ち出した。もとより協力会社とは、成果物の完成義務を負わない「委任契約」を結んでいる。米谷は「リスクはすべてリクルートが取る。計画にない新しい提案や技術的な挑戦をどんどんしてほしい」と協力会社に呼びかけた。

 「米谷の考え方には共鳴できた。決してやさしくはないが、役割を果たせるのは光栄と感じた」と大場は当時の心境を説明する。

 プロジェクトは「基盤構築」「運用構築」など六つのグループの下で、20のチームに分かれて進めることにした()。各チームのほとんどが、協力会社とリクルートの混成チームである。チームのメンバーは同じオフィスで、机を並べて作業を進める。

図●プロジェクトの組織体制
図●プロジェクトの組織体制
協力会社を含め約250人が参加、六つのグループには愛称を付け色分けした
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