「全体では計画通り。7~9月期は前年レベルに改善した」(富士通の加藤和彦取締役執行役員専務)、「事業非連結化の影響を除くと、売上高は前年並みを維持した」(NECの遠藤信博社長)。

 大手IT4社の2011年4~9月期決算では、直近の7~9月期が回復基調にあると強調する声が相次いだ()。東日本大震災の影響やIT投資の低迷による4~6月期の落ち込みを完全に埋めてはいないが、各社の状況は改善しつつある。一方で、欧州債務危機や円高、タイの洪水による影響を受け、国内企業のIT投資の回復が想定以上に遅れる可能性が出てきたのが不安要因だ。

表●国内IT大手4社の2011年4~9月期連結決算
単位:億円、▲はマイナス
表●国内IT大手4社の2011年4~9月期連結決算

 富士通の「テクノロジーソリューション」セグメントは、売上高が前年同期比1.1%減の1兆3854億円、営業利益は同18.9%減の457億円。大型システム商談の減少などで減収だが、携帯電話基地局の販売やアウトソーシング事業が堅調で、全体としては前年同期並みの売上高となった。利益については震災の影響で4~6月期が落ち込んだ上に、「クラウド事業などへの先行投資が利益を押し下げた」(加藤取締役)。

 NECは売上高が前年同期比1.8%減だったものの、営業利益は同6.3倍の68億円に回復した。利益をけん引したのは通信会社向けのネットワーク機器事業で、ITサービス事業は減収減益が続く。流通や通信向けのITサービス需要が低迷していることが要因だ。

 好調なのはNTTデータで、大手4社では唯一、増収増益となった。売上高は前年同期比7.1%増の5717億円、営業利益は同21.1%増の307億円を確保。売り上げ増は連結子会社の拡大、営業利益増は原価率の改善がそれぞれ寄与した。「厳しい事業環境が続いたが、全体として順調に推移した」(NTTデータの山下徹社長)。

 日立製作所の情報・通信システム部門は、売上高が前年同期比2.8%増の7970億円で増収だったが、営業利益は同10.1%減。「ストレージ事業が堅調で売上高が拡大したが、震災の影響が残り、減益となった」(日立の三好崇司執行役副社長)。ただ、同部門は下期の回復を見込んでおり、通期では増収増益の見通しだ。

 当初は各社とも、2012年度に国内IT投資は本格回復すると見込んでいた。しかし、「円高やタイの洪水などがあり、本格回復の時期は不透明」(NTTデータの山下社長)としており、売上高を伸ばせなくても安定的に利益を出せる経営体制の構築が急務となっている。