あなたの会社のシステム部門は、競争力を生み出さないノンコア(競争力を生まない領域)の情報システムばかりにリソースを費やしていないだろうか。ノンコアのシステムに対して、システム屋の視点で必死に頑張るほど“金食い虫”のレッテルを貼られることになるだろう。努力を無駄にせず、ビジネスに貢献し、経営層の期待に応えるためには、「コア」を見極める力を身に付けてリソース配分を見直そう。

 「システム部門が自社の競争力強化に貢献している」と、あなたは断言できるだろうか。各社のCIOやシステム部長に聞くと、「貢献している」と断言できる人は意外と少ない。「どのように貢献しているか?」とたずねて納得感のある説明ができる人となると、さらに減ってしまう。ITの責任者でさえそのような状況なのだから、経営層や事業部門からどのように思われているかは想像に難くない。連載第1回で紹介した経営企画部門の声を改めて参考にしてもらいたい。

 今から10~20年前までは、ITを利用すること自体が差別化要素になったし、ITの素養がある人は比較的少なく、“戦略情報システム(SIS)”の名の下にシステム部門が“花形”の職場たり得た時期もあった。ビジネスの最前線の横にはシステム部員が張り付いていた。

 しかし、現在はどうか。ITが当たり前となった半面、複雑化した“負の資産”を背負い、バージョンアップやリプレイス、保守・運用にリソースの大部分を奪われ、ビジネスの最前線との距離がどんどん離れてしまっているのが実情だ。

 再び経営層の期待に応え、「競争力の強化に貢献している」と断言できるシステム部門に変革するために、まずはシステム部門のリソース(IT要員・IT資産・IT予算など)の分配方法を大胆に見直す必要がある。負の資産の子守役に安住して自己満足を得るのではなく、ITが競争力の強化に貢献できるコア領域にリソースを集中的につぎ込むことが急務だ。

まずは注力する領域を見極める

 システム部門のリソースを、どこに集中投下すればよいのか。これを見極めるために用いるのが、図1に示す四象限の図だ。縦軸に情報システムやIT関連業務の「市場調達困難度」、横軸にITの「競争差別化への貢献度」を配置した図上に、ITリソースの投入対象となる事業・業務を書き込んでいく。なお、図1の内容は、あくまでも参考例として記したものだ。実際には業種・業態や各社の経営・事業戦略によって異なる。

図1●コアとノンコアを切り分けるために用いる四象限
図1●コアとノンコアを切り分けるために用いる四象限
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 自社のITリソースを集中投下すべき領域は、図1の右上にある「コアIT領域」だ。競合他社との差別化を図って、企業競争力を高めるためにITを活用する領域である。この領域の情報システムは市場調達が困難なため、パッケージソフトなどでは対応できず、自社独自のシステムを開発・運用することになる。この領域のエッジをさらに鋭くすることは、「競争力強化に貢献する」ことに直結し、経営層や事業部門の期待に応えることとなる。

 これとは対照的に、真っ先にITリソースの投入量を減らすべき領域となるのが、左下にある「ノンコアIT領域」だ。この領域で、どんなに高価で高機能なシステムを導入しても、企業の競争優位には直結しない。また、自社のリソースで開発・運用するよりも、ITベンダーなどに任せた方がコスト効率や品質が優れていることが多い。必要不可欠なものを特定した上で、社外へのアウトソーシングやクラウドコンピューティングなどを徹底的に活用し、QCD(品質・コスト・提供スピード)の向上に注力すべきである。