ソーシャルメディアと「組織」。これは企業がソーシャルメディアを様々な施策に利活用し始めてから今日にいたるまで、実に数多くの議論がなされてきたテーマだろう。そして、いまだに決め手となる解が、なかなか見いだせない難問でもあるはずだ。

 これまで「ソーシャルメディアに取り組むためには、社内に専門の組織を設ける必要がある」というようなことも語られてきた。だが、少なくとも日本国内において、こういった組織を設けているのはごくごく少数である。現実には組織を設けるどころか、一人の「専任担当者」をアサインすることすら大変な状況なのではないだろうか。

 そこで今回は、こうしたよくある現状を踏まえつつ「組織」としてのアプローチについて考えていこう。

「個人」での対応の延長が「組織」に

 そもそも、「ソーシャルメディアに対しては組織的なアプローチが必要」と言われていながら、なかなか具体的な組織という形になっていない背景を整理してみよう。企業によっていろいろな要素があると思うが、大きく以下の二つに類型化されてくるはずだ。

  • 「組織的なアプローチ」ができるほど「組織」としてのリテラシーが高いとはいえない状況にあった。
  • 「組織」としてソーシャルメディアに相対するためのコンセンサスができていない。

 こうした背景から、まず「個人」ベースでの活動として走り始めたケースが非常に多く、それが結果的に「施策」にまで発展してきたというのが、これまでの日本の企業における、いわゆる「ソーシャルメディアマーケティング」だろう。

 しかも、「やろう」と思ったら意外とできてしまうし、そもそも前回も述べたように、ソーシャルメディアにおけるコミュニケーション自体が、「個人」のいわば属人性に委ねられてしまう面が多くなる。仮にそれが「企業」としてのコミュニケーションであったとしても、最終的にコミュニケーション自体は「個人」に帰結することが多く、個人のノウハウを反映させやすい。このため、これまでに紹介された企業の「ソーシャルメディアマーケティング」に関する「事例」の多くは「個人」にフォーカスされたものが多かったように思える。