「まるで役所のように愛想が悪い」「問い合わせへの回答が『善処します』だけだった」――。帝人のシェアードサービス子会社である帝人クリエイティブスタッフ(TCS、大阪市)には社内の“お客様”から率直な意見が寄せられる。

 TCSの顧客は国内76社、海外80社に勤務する、約1万8000人いるグループの社員たちだ。経理・財務と人事・総務、購買・物流の3つの間接業務サービスを提供する。加えて出向の形で、広報や法務といった担当者をグループ各社に派遣している。派遣者を含めたTCSの社員数は385人だ。

図●TCSが“お客様”である事業会社向けに実施しているCS調査
図●TCSが“お客様”である事業会社向けに実施しているCS調査
外部の同業他社もベンチマークして、コストの妥当性を示す
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 2001年4月設立のTCSは9年の歴史を持つが、外販を一度もしたことがない。「プロフィットセンター構想を描いたこともあったが、コストセンターとして経費節約というミッションに専念した」と、帝人のCHO(最高人財責任者)でもあるTCSの武居靖道代表取締役社長は話す。

 特にユニークなのが、グループ社員を対象にした顧客満足度(CS)調査だ()。2004年から2年に1回、グループの経営層から現場の社員まで約650人を対象に、TCSのサービスについてアンケートを取っている。

 CS調査の自由意見欄を通じて、冒頭のような厳しい声も届く。「間接業務をサービスとしてグループに提供する当社にとって、一番大切なのは事業会社からの評価だ。調査結果は社内で回覧し、クレームには具体的な改善策を打ち出している」と武居社長は強調する。

競合他社と価格や生産性を比較

 CS調査だけでなく、TCSは同業他社とのベンチマーク調査も行う。CS調査と同様に2年に1回実施している。グループの内側を向いてCS向上を目指すばかりでは、サービスが過剰になり、事業会社がTCSに支払う費用の増加につながる恐れがあるからだ。そこでほかのシェアードサービス会社のコストや業務効率を調べる。

 例えば給与計算については、スタッフ1人当たりの管理対象社員数や単価を調べる。同業他社と比較し市場の適正価格を常に知ることで「自らを律している。客観的に料金を説明できる材料にもする」(武居社長)。

 実際にCS調査の際に「TCSのサービス料金は高い」という声が上がることがある。そんなときは同業他社の水準と比較しながら、料金の妥当性を事業会社に説明している。

 グループ各社に割り当てて徴収する出張旅費や研修費、社宅運営費といったグループの変動費(経費)を2007年度と比べると、2008年度は25%、2009年度は51%減った。出張を抑えるためにテレビ会議を導入してはどうかといった提案も事業会社に行いながら、成果を積み上げている。

 次回は、シェアードサービスを分社化しない「本社部門型」でありながら、間接費用の削減に成功している小林製薬の事例を紹介する。