写真●大部屋で入力される申し込みはがきのうち、顧客の記入に漏れや間違いがあ るものは大連の専用ルームから日本の基幹システムに接続して個別に処理
写真●大部屋で入力される申し込みはがきのうち、顧客の記入に漏れや間違いがあ るものは大連の専用ルームから日本の基幹システムに接続して個別に処理
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 ベネッセコーポレーションは通信教育事業「進研ゼミ」への入会申し込みはがきなどの入力業務を、2009年7月から大連にBPOしている。送られてくるはがきとファクスだけで年間400万件に達する。

 そのうちの10%に当たる40万件を大連に移管している。はがき1枚当たりの入力コストを3年後に半分にするメドは立った。

 委託先はインフォデリバの大連センターだ(写真)。「BPO開始当初から入力ミスはゼロで、日本と業務品質は同等」(ベネッセの基盤本部次世代基盤推進部の家吉克彰部長)と高く評価している。

 ベネッセは今、顧客との契約や教材の在庫引き当てと出荷指示、そして配送といった一連の販売プロセスの大改革に取り組んでいる。今回のBPOはその一環で、業務改革とセットになっているのがポイントだ。従来はまず学年別や商品別、時期別などに年間で1500種類もあるはがきを手作業で分類した後に、入力していた。

 ここに課題が2つあった。入力前に実施する仕分け作業の効率化と、個人情報保護の強化だ。後者については、数カ所の郵便局から国内に点在する入力業者まではがきを輸送していたが、「厳重な管理下の輸送とはいえ、トラックが事故に遭うリスクを心配していた」と家吉部長は明かす。

BPOは販売プロセス刷新の一環

 そこでBPOを機にプロセスを再設計した。都内のある郵便局1カ所にはがきを集め、局舎内に作業場を構えるスキャニング業者が画像データ化する。送信する際は「名前」「住所」といった項目別にデータを分割。オペレーターが個人を特定できないようにするためだ。

 大連側では、バラバラになったはがきのデータをオペレーターの習熟度に応じて振り分け、各自が手入力する。顧客の記入漏れや書き間違いなどの例外処理だけは専用ルームで対応。インフォデリバは納品時に再びデータをつなぎ、1枚のはがき情報としてベネッセの販売管理システムに戻す。

 大連でデータ入力するオペレーターはベネッセ以外の仕事もこなすが、個々にはデータの一部しか受け取らないので、個人情報漏えいの心配は無い。はがきの原本は1カ所の局舎内にとどめ、そこから持ち出さない。すると輸送コストも減る。

 はがきデータを電子化することで、仕分けの前処理も自動化できた。ベネッセにはがきが届いてから、教材を会員に発送するまでのリードタイムを2日から1日に短縮した。

 BPOを契機に、午前中に届いたはがきの対象教材は、同日午後に出荷できる体制を目指している。このために、日次のバッチ処理しかできない既存の販売管理システムを2011年秋に刷新する。2011年度末には大連にBPOする規模が全体の80%に相当する320万件に達する予定だ。

 次回は、日本人でさえ判読が難しい診断書の入力業務を中国にBPO開始した太陽生命保険の事例を紹介する。