NTTコミュニケーションズは、児童見守りシステム「C-Shuttle」を開発し、新潟県三条市の小学校で実証実験を始めた。GPSとBluetoothに対応した小型端末を児童に持たせるとともに、Bluetoothで小型端末と通信する基地局を通学路近くの住宅や企業、市の施設などに設置して児童の位置を把握する仕組みである。「携帯電話などを使ったシステムに比べて、安価に設置できるのが特徴」(同社)とする。

児童に持たせる小型端末とケース
児童に持たせる小型端末とケース
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実証実験の内容
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今回はパソコンをBluetooth(クラス1)対応の基地局とした。実用化する際は専用端末にする計画
今回はパソコンをBluetooth(クラス1)対応の基地局とした。実用化する際は専用端末にする計画
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各教室に設置するBluetooth(クラス2)対応基地局。外観は児童に持たせる小型端末とほぼ同じ
各教室に設置するBluetooth(クラス2)対応基地局。外観は児童に持たせる小型端末とほぼ同じ
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 実証実験は、2011年10月12日~2012年3月末ごろまで実施する予定である。三条市のある小学校で希望者を募ったところ、約180人が参加することになった。実証実験の目的は、位置把握の状況や各種機能の検証といった技術面と、ニーズや料金体系などのビジネス面の調査である。実用化時期は未定だが、順調に進めば2013年4月からの実用化が可能になるとする。料金は、「端末代を含めて月額500~600円であれば受け入れられるのではないか」(NTTコミュニケーションズ)とした。

 C-Shuttleが提供するのは、GPSで測定した児童の位置情報や、登下校の情報である。児童の位置情報は、5分ごとにGPSで測位して、測位結果を近くにある基地局にBluetooth(クラス1:通信距離は最大500m)で送信する。基地局はさらに、無線LANを経由してサーバーに情報を送る。これで5分ごとの位置情報をサーバに蓄積することができる。保護者の操作時に測位を始める従来方式では、誘拐などのトラブル発生時に端末が壊された場合、児童の位置を把握できないといった課題があった。C-Shuttleでは、少なくとも5分前の情報を確認できる。

 学校内の各教室には、通信距離が30m程度と短いBluetooth(クラス2)に対応した基地局を設置している。この範囲に児童が持つ小型端末が入ると、登校したことを小型端末がBluetooth(クラス1)対応基地局に送信する。逆の場合は、下校したことを通知する。その後、Bluetooth(クラス1)対応基地局が、無線LANを経由してサーバーに情報を送る。

 このようにC-Shuttleでは、通信距離の異なるBluetooth基地局を組み合わせることで、屋内でのピンポイントの位置の把握を可能にしたのが特徴である。実証実験では、Bluetooth(クラス1)対応基地局を約30台、Bluetooth(クラス2)対応基地局を約20台設置している。通学時の児童見守りだけでなく、ショッピング・センターやテーマ・パークなどの迷子対策システムなどへの応用も考えているという。

 実用化に向けては、いかに基地局を設置するかがコスト面と運用面でポイントになる。これについては、「子供を切り口にセンサー・ネットワークのエリアを増やす」(NTTコミュニケーションズ)戦略を採る。例えば、自治体などに設置してもらうことを狙っている。今回も三条市が率先して基地局の設置場所を探してくれたという。これにより、設置コストを減らすことができた。

 子供を地域で協力して見守るという意識によって基地局の設置場所を増やし、さらなる展開へとつなげる。子供用に設置した基地局を活用すれば、老人の見守りといったサービスにも応用できる。さらに基地局が全国に広まれば、自動車の盗難防止といった用途にも使えるとする。国内だけでなく、海外展開も視野に入れている。そのために、特定小電力無線ではなく、Bluetoothを選んだという。