スマートフォンは携帯電話事業者の法人戦略にも変革を迫っている。
これまで携帯電話の法人市場はフィーチャーフォンがメインであり、「指紋認証など端末のハードウエアスペックが決め手となるケースがほとんどだった」(NTTドコモの有田浩之法人ビジネス戦略部法人マーケティング担当課長兼ソリューションビジネス部商品企画担当課長)。それがスマートフォンでは、「どうやったら業務を効率化できるか、コストを下げられるかなど、サービスとセットでの提案を求められる」(有田担当課長)ようになってきたからだ。
加えてスマートフォンは、フィーチャーフォンと異なり、携帯電話事業者ならではの機能は少ない。携帯電話事業者がソリューションを提供する必然性も薄れている。
そんな中、各携帯電話事業者のスマートフォンに関する法人戦略が少しずつ見えてきた。面白いことに大手3社は三様の方向性を打ち出している。
ドコモは中堅中小向けにクラウドを拡充
NTTドコモのスマートフォンの法人戦略は、コンシューマー市場と同様にAndroidが主軸である。中堅中小企業に対しては、スマートフォンとセットで利用しやすいクラウド系サービスを中核とする。一方、大手企業に対しては、システムインテグレータの力を借りて市場を広げる考えだ。
中堅中小向けのクラウド系サービスは、既に形になって表れている。MDMサービス「スマートフォン遠隔制御サービス」、メールやスケジューラーをスマートフォンから利用できる「モバイルグループウェア」を2011年4月に開始した(写真2)。中堅中小企業の多くはこれまで、パッケージ商品を購入して社内環境を構築している。「これらはクラウドで置き換えられる可能性が高い。実際、クラウド系サービスでは、10ID以下の申し込みが殺到している」(有田担当課長)という。
一方の大規模な企業の場合は、企業システムの多くの部分はこれまでモバイル対応できていなかった。「これをスマートフォンとタブレット端末の普及で、爆発的に加速させられると考えている」と有田担当課長は話す。
とはいえ、規模が大きく、仕組みも複雑な業務システムが対象となると、システム構築は必ずしも容易ではない。これまではドコモ自身がインテグレーションを手掛けてきたが、今後はインテグレータとのアライアンスを強化し、パートナーの力を借りてやっていきたいという。
一方でドコモ自身は、クセのあるAndroidのVPNで、利用できる環境を増やすほか、リモートアクセスサービスのスマートフォン対応を予定する。
このほかマルウエア対策でも、マカフィーのAndroidアプリケーションを「ドコモ あんしんスキャン」という名で無料提供する。