※本記事は日経コンピュータの特集をほぼそのまま再掲したものです。初出から1年近くが経過しており現在とは状況が異なる可能性がありますが、この記事の価値は今でも変わらず、読者にとって参考になる部分が多いと判断し、改めて公開しました(ITpro編集部)

 上長やシステム部門に、仮想マシンの必要性やスペックを申請、それらの承認を受けるプロセスがワークフローだ。ワークフローを整備していないと、不要な仮想マシンや、妥当なスペックと乖離したものが作られてしまう。

 利用者の申請・承認にかかる手間を省くため、ワークフローをシステム化すべきというのがこれまでの常識だった。この常識は必ずしも正しくない。

2段階で要求を厳選

 東京海上日動は、システム部門とシステム子会社が2段階で利用部門の要求を絞り込んでいる。システム化はしていない。「精査のプロセスをシステムに落とし込めない」(東京海上日動の玉野肇IT企画部長兼IT予算グループリーダー)からだ。手作業で妥当性を判断している。構築に数日しかかからないアプリケーションの基盤となる仮想マシンも精査の対象である。

 第1段階は、アプリケーション開発・保守部隊と利用部門との間で進めるものだ(図1)。データベース設計やUI(ユーザーインタフェース)、経理など機能や業務別に分かれたアプリケーション開発・保守部隊が、関係する利用部門から要求を吸い上げ、必要性を審査する。「利用部門が要求した仮想マシンの約2割を削れている」(東京海上日動の玉野部長)。

図1●東京海上日動火災保険における利用部門の要求を絞り込む仕組み。システム部門やシステム子会社の東京海上日動システムズは、2段階で利用部門の要求を精査する。
図1●東京海上日動火災保険における利用部門の要求を絞り込む仕組み
システム部門やシステム子会社の東京海上日動システムズは、2段階で利用部門の要求を精査する
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 次が、アプリケーション開発・保守部隊とインフラ運用部隊とのやり取りである。ここでは、非機能要求やシステム運用に関するチェックリストを基に、妥当な仮想マシンのスペックを決める。

 非機能要求については、「(利用部門への)サービス提供時間」や「ユーザー数」などの項目がある。システム運用については、「運用担当者の人的ミスを防ぐため、自動化を考慮しているか」や「システムの監視は、誰が、いつ、どこで実施するかが明確か」などだ。こうした細かいレベルまで要件を詰める必要がある場合、ワークフローをシステム化することは現実的ではない。
標準外は手作業で判断

 大阪ガスは、メニューで用意していないスペックの仮想マシンについては、申請・承認プロセスをシステム化していない。システム化を進めつつ、あえて手作業の部分を残しているのだ。