※本記事は日経コンピュータの特集をほぼそのまま再掲したものです。初出から1年近くが経過しており現在とは状況が異なる可能性がありますが、この記事の価値は今でも変わらず、読者にとって参考になる部分が多いと判断し、改めて公開しました(ITpro編集部)

 プライベートクラウドでは、利用部門が必要なサービスを、サービスの提供者であるシステム部門やシステム子会社に注文する。注文するには、仮想マシンのスペックと料金をパターン化したメニューが必要だ。仮想マシンを貸し出すIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)にとどまらず、ミドルウエアをパターンに組み込み、PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)としてメニューを整備している例は少なくない。各パターンに利用料金をひも付けた、課金管理の仕組みも必要になる。

 メニューの作成に当たっては、できるだけシンプルに作ることが成功の秘訣だ。たくさんのパターンがあると、ITについての知識やノウハウがあまりない利用部門が迷ってしまう。

 パターンの増加は運用負荷も押し上げる。パターンが増えれば、その環境がきちんと作成できるかを確認する必要があるし、課金管理のパターンも増えるからだ。

標準化で5種類に絞り込む

 プライベートクラウドの構築に当たり、システムの標準化は前提と言える。「標準化しないと、アプリケーションやミドルウエア、サーバーの種類が減らず、パターンが絞れない。パターンをシンプルにするには標準化の取り組みは欠かせない」。凸版印刷の浅野紀之業務システム本部グループ共通業務推進部長はこう話す。

 凸版印刷は、システムを標準化し、メニューのパターンを5種類に絞り込んだ(図1)。標準化に当たっては、業務プロセス、ミドルウエア、サーバーというシステムのすべての階層を対象にした。

図1●凸版印刷における標準化の順序とメニューのパターン。標準化を進め、パターンを5種類に絞り込んだ。
図1●凸版印刷における標準化の順序とメニューのパターン
標準化を進め、パターンを5種類に絞り込んだ
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 標準化のプロセスはこうだ。まず取り組んだのが、業務プロセスとマスターデータの標準化である。105ある製造拠点ごとに存在していた固有の業務プロセスや、事業部ごとに異なっていたコード体系を統一した。

 次に着手したのが、アプリケーション実行環境とデータベース管理システム(DBMS)の標準化である。

 アプリケーション実行環境については、富士通の「Interstage Application Server」に集約した。これまでは、日本オラクルの「Oracle WebLogic Server」などを併用していた。DBMSについては、日本オラクルの「Oracle Database」に一本化した。従来は、日本IBMの「IBM Informix」や「IBM DB2」、サイベースの「Sybase Adaptive Server Enterprise」なども使っていた。