金融庁は2011年10月17日、企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議を開催した。6月30日の再開第1回、8月25日の再開第2回に続いて、IFRS(国際会計基準)そのものを日本の会計基準として採用する強制適用(アドプション)について2時間15分にわたり議論した。

 企業会計審議会は再開後3回の開催を経て、次第に議論の着地点が見えてきたという印象を受ける。前回(世界に意見を発信すべき---企業会計審議会総会(第3回)報告(前編))に続いて、金融庁が2011年10月17日に開催した企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議の再開第3回の議論を中心に見ていく。今回の審議会では、IFRS(国際会計基準)の適用対象を連結財務諸表に絞る「連単分離」の考え方を支持する意見が目立った。

中間報告では「連結先行」を打ち出す

 IFRSを適用するにあたり、「個別(単体)財務諸表」をどのように扱うか---これが再開した審議会での主要な論点の一つとなった。金融商品取引法は上場企業に対して、連結と単体双方の開示を求めている。だが、IFRS適用に関するロードマップを示した中間報告(我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告))では、IFRSを適用する場合、対象はまず連結とする「連結先行」の考え方を打ち出していた。

 連結は「単体と比較した場合、情報提供機能や国際的比較可能性がより重視される」(金融庁の再開第3回審議会討議資料)。一方、単体は「情報提供機能と同時に、会社法の分配可能額や税法上の課税所得など利害調整機能が強い」(同)。中間報告でも、単体は「我が国固有の商慣習や伝統的な会計実務に関連が深い」としている。

 本来なら、連結と単体は密に関連づけて作成するのが自然である。しかし、こうした財務諸表としての性質の違いや企業への影響を考慮して、「まずは連結から適用」とする連結先行のアプローチを打ち出したわけだ。単体への適用について、中間報告では「強制適用の是非を判断する際に、幅広い見地から検討を行う必要がある」としていた。ここで「先行」という表現を使っていたのは、単体への適用も追って検討していくという含みを持たせていたと考えられる。

 連結先行を打ち出した中間報告を受けて、2010年10月には「単体財務諸表に関する検討会議」が設置され、2011年4月に報告書を公表した(関連記事:望まれる「単体財務諸表」に関する本質的な議論(上)同(下) )。同会議の議長を務めた財務会計基準機構理事長の萩原敏孝氏は、再開第1回審議会で最初に発言し、報告書について「当面の重要項目として開発費、のれん、退職給付、包括利益について議論し、単体については当面、現状の会計処理を維持すべきとの意見が多かった」と説明した。