前々回、そして前回と「ソーシャルメディアポリシー」について触れてみた。今回は、いったんきちんとまとめておく意味で“「ソーシャルメディアポリシー」の作り方”と題し、現時点では漠然と語られている「ソーシャルメディアポリシー」に関する重要なポイントを、いざ自分たちが実際に策定する段になっても困ることのないようにまとめておこう。

ポリシーの必要となる理由には攻めと守りの両面がある

 そもそも、なぜ「ソーシャルメディアポリシー」が必要とされてきているのだろうか。これは以下の二点の考え方が中心となる。

  1. ソーシャル メディアを自分たちのマーケティングコミュニケーション施策のために利活用するにあたって、その利用の仕方を“組織として”内外に明確に定義付けるため
  2. 自分たちのマーケティングコミュニケーション施策において直接的に関係のない場面においても、ソーシャルメディア上で不手際やトラブルを起こさぬよう、そのリスクを最小限に保つため

 1は企業としての「発信」を中心に考えた、いわば「攻め」の側面である。それに対して、2は企業としてだけではなく、施策に直接的に関係してない従業員、あるいは関係者までも含めた企業コンプライアンス的な要素の大きい、いわば「守り」の側面になってくる。

 これまでは、少なくとも1の要素だけがきちんと成立していれば「ソーシャルメディアポリシー」として通用していたが、昨今求められてきているのは、むしろ2の要素であるというのが、この連載でこれまで語ってきたテーマだ。

細則で縛ることよりも全体の原則を決める

 さて、これらを前提にしつつルールを作っていく。まずはルールを設ける前に、少なくとも組織内においてソーシャルメディアに関する知識・情報レベルの最低ラインをきちんと設けることを考えなくてはならない。

 これは、上記の「攻め」と「守り」のどちらの側面においても重要だ。つまり「ソーシャルメディアポリシー」には、“全く知識・情報を持たない人を数多くのルールで縛り付ける”ことよりも、“ある程度の知識・情報を身につけてもらった上で、最小限かつ全体を網羅できるルールを適用する”ことが求められてくると言ってもいいだろう。

 私もかつて社内の「ソーシャルメディアポリシー」を考えた際には、この考え方を非常に重視した。それは“細則よりも原則”で「ソーシャルメディアポリシー」をまとめていきたかったからだ。

 特にソーシャルメディアを、企業のマーケティングコミュニケーション活動のためのツールとして利活用していく際に最も問われてくるのは、実は“コミュニケーションにおける柔軟性”になってくる。そして、その柔軟性は「個人」の、いわば属人性に委ねられてしまう面も多い。そもそも、ソーシャルメディアにおけるコミュニケーションの場合、仮にそれが「企業」としてのコミュニケーションであったとしても、最終的にそのコミュニケーション自体は「個人」に帰結するケースが非常に多くなってくる。

 そのため、私がまとめた社内用のドキュメントでは、まず冒頭に「ソーシャルメディアとは何か」ということをしっかりと理解してもらうためのパートを設け、その上でいわゆる「規制する」という意味でのルールは最小限に、つまり「原則」のみにとどめた形としている。

帰省でソーシャルメディアの柔軟性を殺さないように

 こうすることによって、ソーシャルメディアそのものに対するリテラシーを高めることで、そのリテラシーが欠如することによって発生・増大するリスクを最小限に抑えることをまず考えた。だがその一方で、マーケティングコミュニケーション施策のツールとしてソーシャルメディアを利活用する際には、ソーシャルメディアの利点である「柔軟性」などのメリットを殺すことなくコミュニケーションできることも併せて配慮した。

 このようにまとめると非常にシンプルなようにも思えるのだが、もちろん簡単にはいかない部分も少なからずある。特に「組織内において、ソーシャルメディアに関する知識・情報レベルの最低ラインをきちんと設ける」という部分において、困難な点が多々出てくるのではないだろうか。「組織」をいうものを考えると、なかなか一筋縄ではいかないはずだ。

 次回以降は、少し長めに、この「組織」について考えてみよう。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
バーソン・マーステラ リード デジタル ストラテジスト
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。早稲田大学卒業後、プロミュージシャンを経てIT業界へ。リアルネットワークス、コールマン・ジャパンなどを経て、マイクロソフト(当時)に入社。2009年より同社の「ソーシャルメディアリード」として、ソーシャルメディアマーケティング戦略を確立させたのち、2011年2月よりバーソン・マーステラに入社し、リードデジタルストラテジストを務める。