BIソフトを開発・販売するウイングアークテクノロジーズの上海子会社が文雅科信息技術(ウイングアークテクノロジーズ上海)だ。中国に進出しても日系企業を想定顧客として製品を販売する日本のソフト会社が多いなか、同社は中国への参入当初から現地企業へをメイン顧客として売り込みを始めた。同社の櫻井洪明董事長、総経理に中国市場での手ごたえと今後の戦略などを聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ



写真1●文雅科信息技術(上海)の櫻井洪明董事長、総経理
写真1●文雅科信息技術(上海)の櫻井洪明董事長、総経理

足元の販売状況や販売体制は?

 顧客へ提案中の案件は常時100件くらいが進行中だ。販売体制は、販売代理店を拡充しており、中国のシステム会社を中心に30社くらいまで増やした。候補を入れると100社くらいあり、まだ増える。

 我が社は中国への参入当初から現地企業をメインの顧客として重視してきた。中国の日系企業ももちろん販売対象とするが、中国でのパイは小さい。そのため、組む相手も現地企業に通じた中国のIT企業が多くなる。

 中国は国土が広く、地域ごとに地盤を持つITベンダーがおり、得意な業種を持つITベンダーもすみ分けつつ全国に数多く存在する。地域で強いベンダーや、ウイングアークのBIに適した業種に強いベンダーを選んで組んでいく方針だ。

 私は中国生まれだが、約25年間を日本で過ごし、外資系のIT企業でアジア統括を担当したこともある。中国と日本の両方の文化や商習慣、市場を理解しており、人脈もあるのが強みだ。これらをウイングアークのグローバル化に役立てたい

日本のソフトを中国で売る際の課題は?

 やはり知名度だ。良い製品を持っていたとしても、知名度がないから中国で売りにくい。そもそも中国で成功して参考になる日系ITベンダーがいないので、ベンチマークもできないのが大変だ。自社で市場調査をして仮説をたてて、それを地道に実践して検証していくしかない。

写真B●文雅科信息技術(上海)のオフィス
写真B●文雅科信息技術(上海)のオフィス

中国での事業目標と進捗はどうか?

 参入一年目となった2010年は約3000万円の売上高だった。このうち、現地企業向けの比率は70%程度。一年目の成果としては満足している。

 2011年12月期の見込みは1億円の売り上げだ。2015年には中国で15億円を売り上げたい。利益は3年目くらいから黒字にする計画だ。

そのための販売戦略や人員増強についての具体策は?

 現地の販売代理店の技術力を上げたい。こちらの技術者はBIの導入に慣れておらず、導入に時間がかかる。もっと手離れよく案件をこなせるようにして効率化したい。

 そのためには導入テンプレートを増やすことも重要だ。日本では既に、日本のパートナーのシステム会社が、小売りや物流など様々な業種向けにテンプレートを用意しており、数も多い。そのため一つ一つのシステム導入が早い。

 中国ではテンプレートが少ないので、企業ごとに要望を聞いて設定などを個別にしていく必要がある。中国のパートナーの技術レベルを上げることと、テンプレートを増やす施策を両輪で進める。

 ウイングアーク上海の人員は、10人超だが、技術者中心に増やして2012年中には倍増させ20人体制としたい。今のままでは、協業先の支援も手が足りなくなってしまう。