法人向けプロバイダーの上海世紀互聯信息系統は2011年8月にNTTデータイントラマートのWebシステム基盤ソフト「intra-mart」を導入しグループウエアやワークフロー管理システムを稼働させた(関連記事)。同社の陳志炯副総経理などに同ソフトを選択した経緯や日本製ソフトの課題などについて聞いた。
intra-martではソフト部品を組み合わせ多様なシステムを構築できるが、どのようなシステムを作っているのか?
陳副総経理:グループウエアとワークフロー管理システムだ。
社内の文書管理、事業用のサーバーなど設備管理、社員の業務報告管理などにグループウエアを使っている。ワークフロー管理システムは、勤怠管理や経費精算、契約の承認などで利用中だ。
今までは紙ベースでこららの業務を進めていたが、このままではもう仕事が回らなくなってきた。一つは事業拡大により業務量そのものが増えてきたこと。情報共有で効率化したり、社内の稟議を上司がどこにいてもできるようにしていく必要があった。二つめは、蓄積したデータの管理もシステム化していないと検索しにくい。何かあったときに過去の契約書などを探しにくく、システム化は内部統制の強化につながる。
ほかにはどのような製品を検討したのか?
周技術総監:中国のERP(統合基幹業務システム)ベンダーが提案してきた米マイクロソフト(MS)の「SharePoint」だ。中国製ERPとSharePointを連携させるソリューションを売り込んできた。米IBM製品も検討したが、価格が高すぎたので対象から外した。
intra-martにした理由は?
周技術総監:二つある。一つは、SharePointよりもintra-martの方が柔軟性が高かったからだ。会社が大きくなるなかで、ワークフローはまだ頻繁に変わる。仕事のやり方が変わっても、intra-martだとそれに合わせてシステム変更を自由にしやすい仕様だった。
二つめは、必要な機能を自由に追加できる仕様に加えて、構築期間が短かくてすむこと。intra-martはソフトの部品を組み合わせてシステムを構築できる基盤ソフトなので、競合製品が3カ月くらい導入にかかるとみられているシステムを、三分の一の1カ月でできる点は大きなポイントだった。事業拡大のペースは早いので、スピード感は重要だ。
日本製だから選んだということはあるか?
陳副総経理:日本製のソフトかどうかは全く気にしない。使いやすさと納期、コスト、信頼性といったポイントをどう満たすソフトなのかどうかで総合的に判断する。
MSの製品以外もいろいろ比較したが、コスト的には必ずしもintra-martが安かったわけではない。機能と納期が特に重要だった。
ソフト分野における日本製のイメージは?
周技術総監:日本製というと、自動車や家電のイメージが強い。ソフトでは印象がなく、MSやIBM、オラクルといった米企業が中国でも有名だろう。
IT業界に我々はいるので、富士通や日立製作所、NEC、NTTデータといった日本の大手ITベンダーの社名は知っているが、一般の中国人はこれらの日本企業がソフトを中国で売っていることを知らないだろいう。
日本のソフトが中国でもっと使われるための課題は何だと思うか?
陳副総経理:知名度やブランド力の向上だろう。先ほども言ったように、車だとトヨタ自動車など日本企業の社名が出てくるがソフトの場合は思いつかない。
intra-martは販売代理店が飛び込み営業で売り込みに来たので知った。説明を聞いたら、とても魅力的な製品だった。もし営業に来なければ日本のソフトを自分から探しにいくことはなく、元々知っている米国や中国企業のソフトの中で比較検討していただろう。
日本製のソフトはまだ中国での導入事例が少ない。具体的な導入企業や構築したシステムの情報、実際の効果など紹介できる事例が増えると、興味を持つ中国企業はもっと多くなるのではないか。