研究機関の中国科学院上海高等研究院は2010年秋にサイボウズのグループウエアソフト「Cybozu Benko System」の利用を始めた(関連記事)。同研究機関の宋応文 学術博士などに同ソフトを選択した理由や評価のポイント、日本製ソフトのイメージなどを聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ



写真1●中国科学院上海高等研究院の宋応文 学術博士
写真1●中国科学院上海高等研究院の宋応文 学術博士

グループウエアを導入した理由は?

宋博士:組織の管理やコミュニケーション不足の解消には、グループウエアのようなソフトが必要だ。日本企業では当たり前のように使われているソフトで、中国でも組織管理のために導入すべきだと考えた。

中国の企業や組織では、グループウエアでのスケジュール共有はしないのか?

金秘書:超大手企業は別にすると、中国企業でスケジュールや情報共有のためのグループウエアを導入しているところは少ない。スケジュールなどを共有して社員同士が効率的に仕事をするやり方に、中国企業はまだ慣れていないと思う。日本では当たり前の仕事の習慣は、組織の効率を上げたりトラブル回避に効果的だ。

写真2●金蓮科技秘書
写真2●金蓮科技秘書

使ってみて実際の効果は?

金秘書:管理対象者のスケジュールが一覧表示でき使いやすい。誰がいつどこで何をしているのかが一目瞭然で、秘書業務に最適だ。現在は研究室の教授や助手、研究の担当者、アルバイト社員を同グループウエアで管理している。

 他の研究所ではExcelに手入力したり、そもそも管理していなかったりするところがほとんど。この研究室のやり方に興味を持つ研究室が出始めているので利用が広がる可能性がある。

なぜサイボウズの製品を選んだのか?

宋博士:サイボウズの他にオープンソースソフトウエア(OSS)や米IT企業のグループウエアなど合計3~4種類の製品を比較検討した。OSSはコストは安いが機能はあまり充実していなかった。米企業の製品は世界での実績は多いものの、価格は高かった。

張研発助理:サイボウズの製品は、複数スタッフのスケジュールが一覧で見やすいというグループウエアの基本機能に優れていただけでなく、アルバイトの管理までできる細かな機能が充実していた点を評価した。機能が多い割には価格が手ごろだった。

写真3●張嘉○研発助理(○は王ヘンに路)
写真3●張嘉○研発助理(○は王ヘンに路)

日本製のソフトのイメージは?

張研発助理:日本のソフトはほとんど知らず、イメージも実はあまりない。日本製というと、カメラや家電、自動車などのイメージが強いからだ。

金秘書:一般的に考えれば、選ぶならまず知っているソフトから選ぶはず。中国や欧米の業務ソフトを知っている人は多いが、日本製ソフトを知っている人は少ないので、認知度を上げていく必要があるのではないか。

機能や価格などを詳しく知った上で比較してもらえれば、日本製ソフトは選ばれる可能性はあるか?

張研発助理:コストと機能的な利便性は最も重要なポイントだろう。どの国のソフトかは関係ない。

Benkoはクラウドコンピューティング型のサービスだが、中国でもクラウドは普及し始めているのか?

張研発助理:クラウドに関する報道は中国で増えているが、普通のユーザーはクラウドがどのような仕組みのシステムでどういうメリットがあるのかもきちんと理解していないと思う。しかし、米グーグルの「Gmail」などのサービスは普通に使われ始めており、「実はあれがクラウドだ」と言われれば、クラウド型のサービスがどういうものなのかを理解する人は多いはず。ユーザーとしてはクラウドサービスは便利なので、知らず知らずのうちに多くの人が使い始めて、中国全土で浸透していくと思う。