製薬会社の張家港市華昌薬業は2012年初頭にも、東洋ビジネスエンジニアリングの生産管理ソフト「MCFrame」を本格稼働させる(関連記事)。華昌薬業の王平社長に同ソフトを採用したポイントや今後のシステム化の計画、日本製ソフトの将来性などについて聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ



写真●張家港市華昌薬業の王平社長
写真●張家港市華昌薬業の王平社長

なぜ日本製の生産管理ソフトを導入するのか?

 品質管理の「機能」、標準化した手順を導入できる「実行力」、日本での「実績」--の三つがポイントだった。

 従来は原薬だけの生産だったが、今後は医薬品の最終製品や一般消費者向けの健康食品なども手がける計画だ。多様な生産パターンや品質管理、トラブル対応が重要になる。この点で日本の製造業の生産管理ノウハウが詰まったパッケージソフトであるMCFrameの機能は魅力だった。

 実行力は、生産現場の作業の標準化を徹底できるという意味だ。これまで属人的に作業を進めていた部分がある。日本製のパッケージソフトを導入することで、人間の手を介する作業をシステム化して、日本のやり方で標準化でき、品質の底上げにつながるはずだ。個人個人の意思は関係なく、システムを通して同じやり方、同じ手法で誰でも標準的な生産業務ができるようになる。

 実績については、日本の大手製薬会社がMCFrameを導入している点を評価した。我が社と似たような薬品を生産している日本の製薬会社が同製品を使っている

スクラッチによる独自開発ではなくパッケージにする理由は?

 日本で運用されているベストプラクティスを導入するにはパッケージソフトが最適だと判断した。華昌薬業は今まで以上の売上高や利益を毎年達成し、成長を続けていく必要がある。そのためには今までのやり方に固執していては無理だ。

 個別開発では、どうしても今までのやり方が残ってしまう。それではダメで、新しい手法を積極的に導入しないと成長の加速はできない。中国より進んでいる日本の製造業の品質管理ノウハウや知恵を、日本製のパッケージソフトを通じて早く取り入れたかった。

今後のシステム化についてどう考えるか?

 時期は未定だが、既に導入している会計システムと、いま導入作業を進めている生産管理システムが自動的にデータ連携できるようにしたい。まずは生産管理システムをトラブルなく稼働させて、現場が使いこなせるようになることが最優先だ。

 データの活用についても興味がある。会計システムや生産管理システムには、大量のデータが蓄積されていくはずだ。これらデータを分析して精度の高い予測や事業計画につなげられるように、ビジネスインテリジェンス(BI)ソフトも、今後導入したい。

他の中国企業も日本製ソフトに興味を持ちそうか。

 業種やその会社の考え方による。短期的なことしか考えず、現状の問題だけを解決できて今まで通りの成長力でよいと考える経営者がいる会社は、機能が充実していても価格が高い日本のソフトをあえて導入しようとは思わないだろう。コストが安い中国製のソフトを選ぶだろう。

 だが、中長期で戦略を考えて、抜本的に課題を解決して成長力を高めたい企業にとっては、進んでいる手法やノウハウを取り入れられる日本製パッケージソフトの導入は検討する価値がある。

 ただ、中国で売れる日本製ソフトは、MCFrameのように生産管理など特定の専門分野での強みがあり、特徴がある製品に限られるだろう。一方で、税務や会計といった業務ソフトは汎用的なので、中国の用友軟件などのERP(統合基幹業務システム)製品で十分だ。同分野では、日本製ソフトは同じ土俵では戦いにくいだろう。