iモードのエコシステムを引き継ぐとはいえ、それは第2の“ガラパゴス”を作るのでなく、NTTドコモがこれまで築いてきたものと、スマートフォンの思想の両立を目指す――。同社執行役員スマートコミュニケ―ションサービス部長である阿佐美弘恭氏はこのように語る。第4回は同氏に今後のサービス展開の考え方などを聞いた。

(聞き手は大谷 晃司=ITpro

「dメニュー」「dマーケット」(関連記事)の登場の背景をあらためて聞きたい。

NTTドコモ 執行役員 スマートコミュニケーションサービス部長の阿佐美 弘恭氏
NTTドコモ 執行役員 スマートコミュニケーションサービス部長の阿佐美 弘恭氏

 日本の携帯電話のユーザーは、iモードが99年に始まったこともあり、携帯電話で“やれること”に対する期待度が高い。“素”のままのスマートフォンを提供するだけでは、その期待度に追いつかない。

 日本では赤外線やワンセグ、おサイフケータイといった機能をグローバルなものか否かは問わず、受け入れてきた。そして日常の生活でそれらが使い込まれている。そういう機能を備えていないスマートフォンが出てくると、どちらかというと「何々ができない」とネガティブな見方が出てしまう。

 2010年4月にXperia(SO-01B)の販売を開始して、我々の予想を超える反響を得た。当時は「iモードはiモード」「スマートフォンはスマートフォン」という分け方で展開していたが、スマートフォンが増加するにつれ、「iモードのメールをスマートフォンでも使いたい」といったユーザーの声が強くなってきた。

 当初スマートフォンを購入していた方は、iモードが使えない前提で購入しており、それを納得して使っていた。だが、時間がたつにつれ、「今できていることがなんでできないの」という要望が出てきた。

 そこで、まずはiモードのメールアドレスをそのまま移行できるような仕組み(spモード、関連記事)を去年の9月に開始。それを一つの契機としてスマートフォンが普及していく。こうした状況で、iモードで使っていたコンテンツがスマートフォンでは使えないといった不満も出てきた。

 iモード上では、約3000社のコンテンツプロバイダーが約2万3000サイトを展開している。こうした世界感はAndroidマーケットにはない。iモードはWebを介してコンテンツにアクセスする世界を展開してきた。スマートフォンの販売台数が350万台を超えたあたりで、コンテンツプロバイダーが「そろそろスマートフォンでしっかりやっていかなければならないのではないか」と考えるようになった。

 そこでNTTドコモとしても、ただスマートフォンを販売するだけでなく、スマートフォン上でビジネスをする基盤の必要性を感じ、昨年の暮れから「エコシステムを作りましょう」ということになった(第2回 iモードのエコシステムをスマホに引き継ぐ)。