最後に、PaaSの利用例を考えてみます。アプリケーションの開発環境を備えていますので、求められる機能をPaaS上に実装すればいいのですが、実際のところ、PaaSの制約が大きな壁となることが多いです。特にKVSしか提供していないPaaSだと、従来と同じタイプのシステムには適用しづらい面があります。

 そこで筆者が考えた一つの利用法が、SaaSの「ファサード(共通窓口)」の役割を担うアプリケーションを作ることです。先述したように、多くのSaaSはREST方式のAPIを提供しており、さまざまな環境からアクセスすることができます。しかしデータの形式は、XMLやJSONといったように異なることが考えられるので、サービス連携ごとに各SaaSのデータ形式を意識する必要があります。

 具体的には、PaaS上に複数SaaSのファサードとなる一つのサービスを開発します()。ポータル画面のような役割を担うわけです。入り口を一つにして共通のAPIでアクセスできるようにすることで、SaaSの違いを意識することなくサービスを利用可能にします。ファサードからはそれぞれのAPIを意識してSaaSにアクセスします。多くのPaaSはRESTでアクセスする機能を備えているので、RESTのAPIを提供しているSaaSには容易にアクセスできます。また、使用したいSaaSがRESTなどの汎用的なAPIではなく特定の技術に特化したAPIを採用していたとしても、ファサードだけでそのAPIに対応すればよくなります。PaaS上にSaaS向けのファサードを用意しておくことで、インターネットを通じてさまざまなシステムからサービスを共有することができます。

図4●PaaSアプリケーション「ファサード」
図4●PaaSアプリケーション「ファサード」