今回は、新・14カ条の第12条「自治体の枠を越えた標準化・共同化に取り組め!」についてご説明します。この新12条も、旧十四か条には全くなかった項目です。というのは、旧十四か条を書いた2005年(平成17年)頃の現状では、市町村の枠を越えて共同化しようとしても、うまく行くとは思えなかったからです。

以前は良い面よりも悪い面が出ていた

 当時、小規模な自治体が電子計算機利用協同組合を設立し、ハードを共用したり、住民基本台帳の仕組みや税に関するシステムを共同で開発・利用したりするケースがありました。しかし、私の知る限り、多くのケースでは、共同化の良い面よりも悪い面が出ていたと思います。

 ICT部門が別組織になったことで市町村の市長部局のチェックが甘くなったり、複数の自治体の共同の組織であるがゆえに、どの自治体も注文をつけるのを遠慮したり、組合職員に専門知識がなくベンダーの言いなりになるという状況です。その逆に、10年以上その組織に在籍している職員がいて、他の職員が意見も言えない状況になっていて、古い知識とベンダーとの癒着が幅を利かせている、といった組合をいくつも見てきました。

 私が佐賀で経験したケースですが、国民健康保険の組合のICTシステムがとても無駄が多いように思われたので、理事として私がメスを入れようとしたら、県庁OBの専務はじめ関係職員の強烈な抵抗に遭い、現状を調べることすらできないままに終わってしまったこともあります。理事である他の市長は、無関心でした。

 しかし、平成17年以降、CIO制度が整備され、それなりの経験を積んだ人がCIOやCIO補佐官に就任しています。ICT資産管理台帳を共同で利用している都道府県も増えてきています。基幹システムを共同で開発利用したケースも出てきました。少しずつ前進していると思います。

 当たり前のことではありますが、自治体の枠を越えて業務を標準化し、システムを共同化すれば、効果は非常に大きいです。システムだけでなく、組織の統合や共同化にまで踏み込むと、さらに大きな効果が見込めるものもあります。

 例えば、多くの自治体の基幹システムは、IT企業が販売しているパッケージを自分の自治体に合わせてカスタマイズして使っていますが、カスタマイズの部分が多くて、一から作ったのと同じくらいの費用がかかる場合もあります。そして、なぜか5年リースで契約し、5年ごとに巨額のお金を支払っています。

 この状況を、同じくらいの人口規模の自治体で基本的な業務の仕事のやり方をできるだけ統一し、それを反映したシステムを共同で開発すれば、システムの開発費も安く済むだけでなく、5年ごとにリース料を支払う必要もなく、大幅なコスト縮減になります。