米Huluは2011年9月1日、動画配信サービス「Hulu」の日本向けサービスを開始した。このインタビューは開始発表のその日に行ったものである。

 米国の動画配信サービス大手Huluが、日本向けサービスを開始した。サービスの準備を進めてきた国際部 上級副社長のLarcher氏に、今後の戦略を聞いた。(聞き手は西畑浩憲=日経ニューメディア

国内の動画配信サービスでは、一般に苦戦している会社が多い。Huluはどうビジネスを展開するのか。

Larcher 日本の動画配信サービスは、作品単位で料金を支払う形態で、かつSTBなど特定の端末からしか利用できないものが多い。我々のサービスはこれとは異なる。1カ月単位の手頃な固定料金を支払い、作品は見放題。異なる端末を使いオフィスや車中、電車の中、もちろんリビングルームも含めて様々な状況で映像を楽しめる。現在日本で提供されているサービスにはない新しい価値をユーザーに提供することで利用者を獲得し、成長していくチャンスが十分にあると考えている。

日本進出がこのタイミングになった理由は。

Larcher 日本でのサービス提供を検討するに当たり、利用したいサービスの形態や見たいコンテンツの種類などについて、日本のユーザーへの聞き取り調査を2010年にかなりの時間をかけて行った。それと併せて、コンテンツパートナーとの話し合いにも時間をかけた。我々はユーザー、パートナーどちらにとっても実のあるサービスを提供したいと考えたのだ。

 日本にはユーザーニーズがあり、ブロードバンドサービスの普及やスマートフォンビジネスの急速な立ち上がりなど環境も整っている。さらに我々が提供できるほどの価値を提供しているサービスがまだない──そんな今こそが、Huluを日本で提供する最適のタイミングだ。

米国では、テレビ番組は放送後すぐにHuluで提供している。日本での海外ドラマの配信タイミングは。

Larcher 米国での放送後すぐというわけではない。基本的にはその番組のDVDが日本で発売されるのと同じタイミングで配信することになる。

Huluが日本のパートナーに期待していることは。

Larcher コンテンツについて言えば、クオリティの高さだ。日本の利用者にとって魅力的と思えるものを提供してもらいたい。パナソニックやソニーといったメーカーには、Huluに対応した製品をたくさん出してもらいたい。対応製品を増やして、ユーザーがサービスに触れる機会を少しでも多くしてほしい。

米Huluについては売却話が報道されている本誌注)

Larcher 2007年にNBC UniversalとNews Corp.が中心となってHuluを設立した。当時プレミアムコンテンツのデジタル配信についてはビジネスモデルがなく、非常に興味深い取り組みだった。Huluは大方の予測を上回る大成功を収めた。その後The Walt Disney Companyも経営に参加することになったのだが、オーナーが多くなったために企業統治が複雑で難しくなったことがだんだんとはっきりしてきた。ここで一度単一株主にして企業統治の流れを一つにまとめたほうが、今後のHuluの発展にプラスになると考えている。NBC、News、Disneyとは、Huluのオーナーという関係とコンテンツのライセンス元という二つの関係を持っている。この二つの関係が一緒になっていることが必要というわけではない。■

本誌注:2011年10月には売却方針は撤回された。このインタビューの時点でも、「大方の予測を上回る大成功を収めた」など事業そのものには自信を示していた。