C言語とUNIXの開発者、Dennis M. Ritchie氏が2011年10月12日、逝去した。Ken Thompson氏と共にUNIXを、Brian W. Kernighan氏と共にC言語を開発した偉大な研究者が亡くなった。享年70だった(米Bell Laboratories[ベル研究所]に掲載された訃報)。
LinuxやMacOS Xは、UNIXの仕様をベースに開発されており、それらはそれぞれAndroidとiOSの核にもなっている。C++やJava、Objective-C、C#はいずれもC言語を拡張したり洗練させたりした言語である。
Ritchie氏の業績は、インターネットからモバイル、情報システム、組み込みシステムまで、文字通り今日のITの礎になっていると言える。
OSの“原器”UNIX
Ritchie氏は、当時米AT&Tの研究所であったベル研究所でThompson氏と共にUNIXを開発した。1971年頃、その原型が開発されたとされている。
ベル研究所の同氏のホームページで、その当時のUNIXのマニュアルなどを閲覧することができる。
UNIXは様々なコンピュータに移植され、BSD UNIX、System V、Solaris、AIX、UP-UXなど多様なUNIXが生まれた。前述のようにLinuxやMacOSは、UNIXの仕様をベースに開発されており、UNIXは今日のOSの“原器”とも言える存在になっている。
様々な言語に影響を与えたC言語
UNIXを記述するために生まれたのがC言語だ。C言語は“高級アセンブラ”とも呼ばれるほどハードウエアに密着したプログラムの記述が可能であること、当時としては新しい構造化プログラミングを取り入れていたことなどが特徴だ。UNIXが様々なコンピュータで動作するようになったのは、C言語で記述されていたことが大きな理由の一つだ。
Cという名前の由来は、Kernighan氏がC言語以前に開発していたプログラミング言語にある。
C言語はもちろん現在でも使われている。前述のように多くのプログラミング言語のベースになっただけでなく、学ぶことでハードウエアに対する理解を深めることができる言語だ。IT技術者であれば、ぜひC言語を学んでおくことをおすすめする。
コンピュータ界のノーベル賞
Ritchie氏は1983年、Thompson氏と共に「チューリング賞」を受賞した。チューリング賞はコンピュータ界のノーベル賞と言われる。その受賞者の功績を眺めることで、コンピュータ技術の進歩をたどることができるだろう。
Ritchie氏の遺した分散OS
晩年は、新しい分散システム用のOSである「Plan 9」などの開発に没頭していた。
Plan9はオープンソースソフトウエアとして公開されており、Ritchie氏亡き今も、ベル研究所のWebサイトに置かれており自由にダウンロードすることができる。