上海市から新幹線で3時間の距離にある港湾都市の浙江省寧波市。同市に本社を構えるアパレルメーカーの寧波博洋服飾で、「唐獅」ブランドの洋服を手がける社内カンパニーは、ウイングアークテクノロジーズのBIソフトDr. Sum EAを2010年秋に導入した。初期投資は50万元(約600万円)である。
販売や製品計画、トレンド分析、経営分析など幅広い用途でBIソフトを利用している。現在は経営層を別にすると各部門のマネジャークラス20~30人が利用中だ。さらに2012年からは、販売代理店の管理担当者も現場で同ソフトでのデータ分析ができるようにする予定である。王叡唐獅信息管理部信息総監は、「ユーザー数は数百人規模に増える」と述べる(写真3)。
BIソフトを導入するまでは、ERPパッケージが出力する帳票データを、担当部門が必要に応じてExcelに手作業で取り込んでいたという。「BIソフトの導入により、データ抽出にかけていた時間をデータ分析や戦略策定など付加価値の高い業務に使えるようになった」(王総監)。
BIソフト導入の検討を始めたのは2009年のことだ。まずは幅広い製品を比較しようと考え、米オラクルや米マイクロソフト、中国のERPベンダーといった複数のベンダーから一次提案を募った。この際、博洋グループのIT担当者がダイレクトメールを受け取ったことがきっかけでウイングアークを知った。それまでは「どのような会社でどんなソフトを作っているのかも知らなかった」と王総監は振り返る。
現場での使いやすさをが決め手に
経営層だけでなく現場でも使いたいというニーズ、コスト、機能や使い勝手、サポートなどの観点から比較した結果、米IT企業のBIソフトとDr. Sum EAが最終選考に残った(表4)。
Dr. Sum EAに決めた最大のポイントは、パラメーター設定だけで様々な部門の分析ニーズに対応できる点だった。米社の製品は、分析ニーズをすべて満たすにはカスタマイズが必要だったという。「分析機能の豊富さや、パラメーター設定だけで対応できるきめ細やかな仕様が、日本製らしい」と王総監は指摘する。
とはいえ、「製品比較の過程ではソフトの“国籍”は全く意識していなかった」(同)。さらに王総監は「必要な機能、価格、機能追加の柔軟性や拡張性、サポートなどの評価ポイントを満たせば、どの国のどの企業の製品でも選ぶ可能性がある」と続ける。これは同社に限らず、成長を目指し合理的な判断を下す中国企業に共通した傾向と言えそうだ。