上海市の北西100キロメートルに位置する江蘇省張家港市。長江に接する港湾施設が充実する物流の要所で、なかでも経済特区には多くの企業が集まる。
ここに本社を構える張家港市華昌薬業は、東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)の生産管理ソフトである「MCFrame」の導入を決めた。
「食品や医薬品メーカーなど日本の製造業の品質管理は世界一。我々も日本企業の品質管理の考え方や製造手法を学びたい。そのために日本品質の生産管理ができる機能を持つパッケージを採用した」。華昌薬業の王平総経理はこう話す(写真1)。
業容拡大で品質管理が重要に
華昌薬業はこれまで、アミノ酸や原薬を製造し、製薬会社に販売する企業向けの事業を主に展開してきた。だが、さらなる業容拡大のため、医薬品の最終製品や健康食品など一般消費者向け市場への参入を決断した。生産品目を大幅に増やすため、生産管理ソフトを導入し品質管理を徹底することが必要になった。
同社は2010年に生産管理ソフト導入の検討を始め、最終的には中国のERPベンダーである用友軟件のソフトと、MCFrameに候補を絞り込んだ(表2)。実は華昌薬業は、生産管理ソフトを提案していた用友の会計ソフトを既に導入していた。用友の生産管理ソフトを選べば、会計ソフトとの連携がしやすく、導入コストも安いことが分かっていた。
しかし、用友は会計ソフトでの実績が中国で多数あるものの、生産管理ソフトの機能は「あまり充実していない」(王総経理)。対応できる生産パターンなどが少なく、「様々な製品を生産し、品質を管理するには柔軟性が足りなかった」(同)。
機能面では、MCFrameが圧倒的に優位だった。特に、製造過程で何らかの問題があった際に工程をさかのぼって原因究明ができるトレーサビリティー機能、様々な製品や生産パターンに対応できる管理機能などが魅力的だった。日本の大手製薬会社が実際に導入しているという実績も大きかった。
価格は「中国製ソフトの3倍だった」(王総経理)が、同社はMCFrameの採用を決めた。「日本の製造業における品質管理のベストプラクティスを採用し、作業品質を向上させたい」と王社長は意気込む。
丁寧なサポートも高評価
華昌薬業は導入支援サービスの手厚さも評価する。「導入に向けてのサポートが非常に丁寧だった。我々の生産現場に3カ月間も通い詰めて、製造の業務フローを確認してくれた。中国のソフトベンダーは、せいぜい1週間くらいでこれらの作業を終えてしまう」(王総経理)。
今回、MCFrameの販売やサポートを担当したのはTBKという現地のシステム会社だ。TBKはB-EN-Gと販社契約を結んでおり、王社長の知り合いを通じて華昌薬業にMCFrameの営業をかけた。「社員を増やさず売り上げ倍増」 華昌薬業のシステム投資額は、総額で100万元(約1200万円)だ。
システムの稼働時期は2012年の初頭の予定である。同社は現在、本社と工場の移転作業を進めており、新社屋と工場の稼働時期に合わせて新システムを本格稼働させる計画だ。8月時点ではシステムの基本設計を進めるとともに、システムを利用する担当者のトレーニングを実施している。
人件費の高騰が中国で問題になっている状況では、人を増やして売り上げを伸ばすというこれまでのやり方はもう通用しない。「社員数を増やさずに、売上高を倍増させられるようなシステム化を積極的に進める」(王総経理)。