米Adobe Systemsが2011年10月3日と4日、米国ロサンゼルスで開催したイベント「Adobe MAX 2011」(関連記事1関連記事2)。そこで発表された「Adobe Touch Apps」は、タブレットでWebページを作成できるツール群だ。正式発表は11月の予定で、日本公開時期はまだ未定だが、注目Androidアプリであることは間違いない。

 そもそも性能にも限界があるうえ入力スタイルもPCとは違うタブレット。プロ用ツールベンダーのAdobeがどうしてタブレットアプリをリリースするのか?実際開発に関わるデザインフェーズに対してこうしたアプリは活用できるのか?気になるところだ。

 自身がWebやアプリのデザインを仕事にしているAndroid女子部部長の矢野が、Adobe MAXの取材で得た情報から、タブレットアプリを仕事に活用する方法について考える。

Web作成のための7つの製品群

 Adobe Toch AppsはAndroid用タブレットアプリだ。Adobeのクロスプラットフォームなアプリケーション開発技術「Adobe AIR」を使って開発したものもあるそうで、現状は10インチ以上のディスプレーサイズを持つAndroidタブレットをターゲットに開発したという。ちなみに開発は主にサムソンのGALAXY Tab 10.1とソニーの Sony Tabletにフォーカスして最適化されており、iOS版は来年の公開を予定しているそう。

 製品群を整理しよう。Adobe Photoshopの機能を小さいアプリに小分けにした感じの「Adobe Photoshop Touch」「Adobe Carousel」「Adobe Collage」の3つがデジタルイメージの加工や整理、補正を行うアプリという位置づけ。さらにデザイン実務向けにはさらにAdobe illustratorのタブレット版的なベクター形式の描画ツール「Adobe Ideas」がある。

写真●Adobe MAX基調講演で行われたAdobe Photoshop Touchのデモンストレーション
Photoshopの描画エンジンを搭載しており、レイヤー機能も使える。Adobe Creative Cloudを介してPhotoshopと同期する機能が付いてるとのこと
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写真●Adobe Photoshop Touch
タブレットではソフトキーボードが出ると写真のようになってしまうが、タブレットアプリの設計として勉強になる箇所が随所に含まれている点も注目したい。また、おそらく数少ないプロユースのAndroid向けタブレットアプリであることからそのパフォーマンスも気になるところだ
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写真●Photoshopファミリーとして登場したAdobe Carousel
Adobe MAX 2011 会場でプレス向けにデモンストレーションが行われた。iPhoneで撮影した画像を同期操作なしでシームレスにタブレットと共有する様子を披露
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 加えてWebページ制作の初期工程で作る設計図(ワイヤーフレーム)の作成がタッチ操作で簡単にできる「Adobe Proto」、PhotoshopやIllustratorのネーティブファイルをはじめ、jpg、PNGなど複数形式の画像を束ねて資料化するための「Adobe Debut」といった2つのクリエーティブ業務支援ツールがあり、製品は全部で7つだ。

写真●Adobe Protoのデモ
画面はあまり大きくないが、PCよりはるかに複数人で囲んで見やすいのがタブレットの良いところ。タブレットが仕事用ツールになる日も近い?
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 Adobeはオンライン上の制作作業領域といったサービスをクラウド経由で提供する「Adobe Creative Cloud」の提供を予定しているが、タブレットアプリはクラウド上のデータを活用する方法に位置づけられているということで、Adobeのツール戦略の一翼を担っている製品らしい。また、Adobe社のCEOデビッド・ワドワニ氏によると、Adobeの顧客のうち60%がタブレットPCを持っており、そのうち90%がタブレットをクリエーティブな仕事に活用したいと答えたとのこと。それなりにニーズがあるようだ。