「なぜこのお店ではヨーグルトの売り上げが落ちているのでしょうか?」「在庫補充ができず、夕方には商品が無くなってしまうからです」「なぜ在庫が無くなるのでしょう?」「売り場担当のパート社員が昼過ぎに帰宅してしまうからです」「それはこちらではどうにもできない『外部要因』ですね。東京明販でできることは何でしょう?」

 明治乳業の販社である東京明販(東京都墨田区)が月に2回開く「問題解決研修」では、このようなやり取りを繰り返す。問題の本質を探る問いかけを発するのは、研修講師を請け負ったジョイ・アンド・バリュー(東京都新宿区)の大江功次代表取締役だ。

図●課題を解決可能なサイズにして成功体験を積ませる
図●課題を解決可能なサイズにして成功体験を積ませる
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 答えるのは営業や事務、システムといった部門に属する次期管理職候補17人。業務上の問題を取り上げ、2010年4月から11月までの8カ月間で解決を図る。参加者は店頭や業務の現場に行って原因の仮説を立て、改善案を実行して検証することで、具体的な問題解決のプロセスを学ぶ()。

 問題解決の楽しさを味わってもらうことも、大きな狙いだ。「成功体験を積むことで問題解決への意欲を高め、日常業務に積極的に取り入れてもらいたい」。研修を企画した水口貴英情報システム部長はこう話す。

自力で解決できる課題に絞る

 着実に成功体験を積んでもらおうと、大江氏は問題の設定に細心の注意を払う。要因が複雑で難しすぎる問題ではなく、本人の自助努力で短期間に解決できる問題を選ぶ。その根本原因を「なぜなぜ分析」で掘り下げて解決策を導いていく。

 冒頭のやり取りは、市乳販売部販売企画課の松山和宏主任と大江氏の間で交わされたものだ。松山主任は「千葉県茂原市のスーパー、フードプラザハヤシ・アスモ店での『明治プロビオヨーグルトLG21』の売り上げ低下」を問題として設定した。

 価格やパート社員の在庫補充体制などは自分たちで変更できない外部要因とし、自助努力でできる解決策を検討する。POP(店頭販促)で間仕切りしたLG21の専用コーナーを作り、終日品切れしないよう開店時から従来より多く在庫を確保しておく案を策定した。営業を担当する守谷支店の坂下力也主任や、ハヤシの松崎謙一バイヤーの協力を得て実行した結果、売り上げが回復した。

 この経験を通じて松山主任は「小さな問題解決を積み重ねて成果を出していく面白さを体感した」と話す。現在は顧客ごとの課題と進捗を管理するシートを作成し、営業担当者とのミーティングで活用している。