業務プロセスの全体を俯瞰できるシステム部門は、全体最適の観点から業務改革や戦略的な情報システムを提案・推進できる存在といわれる。だが、経営層の多くは「事業への貢献が不十分」と考え、不満がたまっている。システム部門自身も厳しい現状を自覚しているが、どうしようもない事態に陥っている。

 システム部門のあるべき姿としてよく描かれるのは、「ITを使ってビジネスモデルを変革したり、全社レベル/サプライチェーンレベルで業務プロセスの最適化したりするなど、ITを利用して事業競争力や業務パフォーマンスの向上に貢献する」というものだ。これを理想像と考え、その実現に努力しているシステム部門は多い。

 しかし、理想と現実は大きく異なる。システム部門の増員は認められず、予算は減らされるばかり。限られたリソースでシステムを安定運用しつつ、内部統制の強化や国際会計基準への対応など、新しい要請になんとか応えていくことで精一杯の状況にある。事実、こうしたシステム部門の内情は、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が実施したアンケートの結果にも如実に表れている。

「貢献が不十分」、自覚するシステム部門

 図1は、JUASの「企業IT動向調査2011」の中で、システム部門の要員に必要な能力(=システム部門に期待されている能力)とその現状(=システム部門で充足している能力)をシステム部門に自己評価してもらった結果である。

図1●システム部門の要員に必要な能力とその現状
図1●システム部門の要員に必要な能力とその現状
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 これによると、システム部門に最も期待されている能力は「IT戦略策定・IT企画」「業務システムの改善提案」となった。それぞれ49%、44%の回答を集めており、システム部門の多くは自らのミッションをよく理解しているようだ。「システム開発・運用・保守」といった旧来のミッションを単に粛々とこなすだけではなく、「ビジネス/業務への貢献」を果たす必要があることを自覚している。

 一方で、これら「IT戦略策定・IT企画」「業務システムの改善提案」が大いに充足しているとする回答は、それぞれ31%、36%にすぎなかった。ほかの能力と比べて、かなり低い水準にとどまっている。システム部門は、「自らのミッションは分かっているけど、日々の業務で手一杯なため、十分に貢献できていない」という歯がゆさを感じているのではないか。