ブリヂストンは2012年にベテラン社員の引退がピークを迎える。生産現場では効率的に技術や管理ノウハウを伝承していく必要がある。そこで2007年に「グローバル・モノづくり教育センター(G-MEC)」を設立。2010年4月には東京工場の隣に研修施設、G-MECビルも完成し、ここでブリヂストンの「標準」を身につけてもらう(写真)。
この標準は、工程運営に必要な管理ノウハウを集約した同社のベストプラクティスである。G-MECが統一するまでは、工場ごとに教える内容も教え方もバラバラだった。標準を身につける訓練プログラムを作って提供するのもG-MECの役割だ。
特にG-MECが力を注ぐ研修対象は現場の管理監督者になる職長クラスだ。この職長の新任時研修に体感教育を取り入れている。座学の後、動画を見ながら業務フローを学び、次いで研修室でロールプレーイング(ロープレ)をする。仕上げとして近くの工場で本番さながらに動いてみる。
こうした模擬訓練を通じて「職場に戻ったら最低限のマネジメントをすぐに始められるようにする」(大村賢グローバル・モノづくり教育センター長)のが狙いだ。就任から3年以上が経過した職長にも再度受講してもらい、身についているかを確認している。国内に職長は約480人いるが、2007年から2010年夏までに全体の75%(約360人)がロープレ主体の体感教育を受けた。
2大任務に事前に触れて現場で実践
研修する業務の代表格が「現場巡回」と「申し送り」である。現場巡回は、現場でおかしなことが起きていないか異常を探して回る仕事だ。申し送りは、3交代制で働く工場で毎日必ずある業務の引き継ぎのこと。現場巡回をしっかり行って情報を集めたうえで、次のシフトにきちんと伝えることが求められる。このノウハウをロープレで学ぶ(図)。お仕着せのシナリオ通りに動いても身につかないので、段取りを自分で考えて組み立て、フローチャートに整理して全員の前で実演しながら発表し、体に染み込ませる。
次回は、ビジネスシミュレーションゲームにより、部門間連携の失敗が会社の価値を下げることを体感させているトーマツの取り組みを紹介する。