コーセーは1994年から15年以上にわたり、非正規社員を交えたQC(品質管理)サークル「ATM活動」を続けてきた。化粧品工場で働くパート社員「コスメイト」もこのQCサークルに参加しており、参加者の半数をコスメイトが占める。これほどパート社員をQCサークルに巻き込めているのは、活動の出だしで楽しさを実感してもらう体感教育を実施していることが一因だ。

 そもそもATM活動の名称は「明るく、楽しく、みんなで協力し合う」の頭文字から取ったもの。現在94のサークルがあり、2009年度の効果金額は2852万911円で毎年着実に結果を残してきた。各サークルには預金通帳が配布され、口座には活動に応じて賞金がたまる仕組みになっている。

 QCサークルにおけるコーセーの基本方針は「工場で働く人であれば、誰でも分け隔てなく同じ教育を施す」というもの。とはいえ、コスメイトとして働くのはこれまでQCサークルに縁が無かった人たちだ。化粧品工場ということもあって多数を占めるのは地元の主婦だが、全体的には年齢も経歴も性別もバラバラで、最近は外国人も増えてきている。それだけに最初に受けてもらう1日半の研修の初歩コースでは、身近な話題を取り上げる。

笑いを誘う意見に身を乗り出す

 2010年3月25日に群馬工場で実施した初歩コースのメーンプログラムは5時間のグループワークと発表だ。コスメイトのほか、入社1年以内の社員も加わり、合計42人が参加した(写真)。講座名は「親和図法*によるグループディスカッションの実践(アイデアの出し方)」と、いかにもQCサークルの基礎教育らしいお堅いものだった。

写真●パート社員「コスメイト」を含む入社1年以内の社員がQCサークルに参加する前に必ず受講する基礎研修
写真●パート社員「コスメイト」を含む入社1年以内の社員がQCサークルに参加する前に必ず受講する基礎研修
エトキ
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 だが参加者がグループワークで与えられたお題は「いつまでも若々しくいるためには」。親和図法を学んでもらうというよりも、まずはメンバー間でコミュニケーションやグループディスカッションを楽しんでもらうことに主眼を置いている。

 グループディスカッションでは「恋をする」「若い人と付き合う」といった笑いを誘う意見も飛び出して、盛り上がった。こうした普遍的なテーマでは、参加者の年齢や経歴、性別が違っていたほうが、いろいろな意見が出て面白い。ほかの時も「異性にモテるにはどうすればよいか」などの身近で取っつきやすいテーマを選んでいる。とにかく模造紙を囲んで、身振り手振りを交えながらチームで議論する面白さを最初に体感してもらうためだ。

 次回は、評価が下がった部下との人事面談を疑似体験してもらい、管理職の対応力を向上させている、日本ユニカーの研修内容を紹介する。

*KJ法などのように、混とんとした事実を整理して問題を浮かび上がらせる手法