日本映画衛星放送とスカパーJSATは2011年9月1日の記者会見で、オリジナル時代劇の「鬼平外伝 熊五郎の顔」を11月に「BSスカパー!」で放送すると発表した。この作品は、2社が制作するオリジナル時代劇の第二弾となる。会見では、日本映画衛星放送の代表取締役社長の杉田成道氏と、スカパーJSATの取締役 執行役員専務である住友裕郎氏が、それぞれの立場からコメントを行った。

 老舗のテレビ時代劇である「水戸黄門」の2011年12月での放送終了が決まるなど、新作の時代劇を制作して放送する機運が低下している。その一方で、日本映画衛星放送が運営する「時代劇専門チャンネル」の視聴可能世帯数は2011年6月末時点で800万件を突破した。ビデオリサーチによるCS専門チャンネルの接触率調査で時代劇専門チャンネルは、M3層(男性50歳以上)の部門で調査開始以降の48週のうち47週で1位を獲得している。杉田氏は、「時代劇には根強い人気があり、支持層は連綿と続いている」と述べた。

 さらに「時代劇の文化を絶やすことのないようにしたい」としたうえで、時代劇の撮影所の制作能力を維持することの重要性を指摘した。「制作を支えるのは人であり、これがいなくなると再生は不可能になる。できるだけの支援をしたい。あらゆるところに呼びかけて力を結集し、この文化を次の世代に継承したい」と意欲を見せた。CSチャンネル自身のオリジナル番組制作も、こうした時代劇制作能力伝承の一助となりそうだ。

 スカパーJSATの住友氏は、「日本人の心のふるさとである時代劇が地上波で減り続ける中で、スカパーJSATとして何かできないか、と考えているときに、杉田社長から共同制作のお話を受けた」という。今回のオリジナル時代劇は、2011年10月開局のBSの新チャンネルである「BSスカパー!」の目玉番組の一つと位置付ける。

 会見で杉田氏は日本の時代劇を取り巻く現状について「今年の時代劇映画の本数を見るとそれほど多くない」と指摘した。日本と外国における時代劇の制作環境の違いについては、「中国や韓国では国家的に映画産業への助成を行っており、時代劇の本数も多い」「これらの国の時代劇が日本にも入ってきており、なんで日本にいるのに中国や韓国の時代劇を見なければならないのか、と視聴者として感じることがある」という。「助成すればいいという問題ではないが、こうした現状を全体で認識する必要がある」とした。

 この作品の制作費は、日本映画衛星放送とスカパーJSATが共同で負担する。負担率は、日本映画衛星放送のほうが大きい。会見終了後、杉田氏は、自社で制作費を負担することについては、「これまでの有料放送事業の収益を番組制作の形で還元する」としたうえで、「この作品のみで考えると利益を確保できないかもしれないが、新しいものを作らないと放送するものがなくなってしまう」と述べた。さらに、新たに番組を制作することで、「オリジナルの新作を放送することで視聴者に満足してもらえる」「時代劇というものを広くアピールできる。多くの人に認知してもらえる」という。