IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

ベテラン“システム屋”たちの会話
ダメな“システム屋”の会話 “システム屋”A 「巨星落ちる、か」
“システム屋”B 「スティーブ・ジョブズが亡くなった。56歳か。不世出の天才、早すぎた最期だね」
A 「我々の世代は特にショックが大きいよ」
B 「ウィンドウズ3.1を見た時、マッキントッシュのまねだと思った世代」
A 「彼がアップルに復帰した時には祝杯をあげた世代」
B 「そして今夜は追悼の一杯を飲まずにいられない世代」
A 「確かに。本当に残念だ。ああいう人は、もう出ない気がする」
B 「出ないだろうね」
A 「訃報に接して、改めてYouTubeでビデオを見たんだ」
B 「例のスピーチか、スタンフォード大学の」
A 「そう2005年の学位授与式のスピーチ。改めて感動したなあ」
B 「今日が人生最期の日だとしたら、今日予定していることは本当にやりたいことか、という内容が印象に残っているよ」
A 「名言はいっぱいあるけど、自分は『点と点をつなぐ』という話が心に響いた」
B 「それはどういう話だった?」
A 「ちょっとウェブサイト開いてみてよ・・・」

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ジョブズの至言から学べること

 米アップル会長のスティーブ・ジョブズが2011年10月5日、亡くなりました(関連記事)。彼が2005年6月にスタンフォード大学で行ったスピーチはあまりにも有名で、私と同じ世代でもそうでなくても、改めて見返した人も多いのでないでしょうか。スピーチの原稿と映像は、同大学の公式ウェブサイトに掲載されています。日本語訳も日本経済新聞電子版などで紹介されています。

 スピーチの3つの話題のうち1番目は「connecting the dots」、すなわち「点と点をつなぐ」という話です。大学に進学したスティーブ・ジョブズでしたが、半年で退学してしまいます。無理をして彼を大学に進学させた両親の貯金が減っていくのを静観できずに彼は退学しますが、その後しばらく“モグリ”で聴講したのが「カリグラフィー」の授業でした。カリグラフィーとは、文字を美しく見せるための様々な書体や手法の総称ですが、彼はこれにのめり込んだそうです。

 10年後、パーソナルコンピュータの「マッキントッシュ」を開発する時、カリグラフィーに凝った成果が思いがけない形で取り込まれます。マッキントッシュにいくつもの美しい書体が盛り込まれたのです。電子計算機がいくつもの書体を表現するというのは、今でこそ当たり前になっていますが、当時は前代未聞でした。

 カリグラフィーという点と、マッキントッシュという点がつながったのです。点と点が「つながる」、ではなく「つなぐ」。connecting the dotsという言葉がそのことを表しています。

 そして彼はスピーチで、将来を見据えて今やっていることをつなげることはできない、過去に行ったことをつなげることができるだけだ、と述べてこの話題を結んでいます。これまでやってきたことは将来、何かの時につなげることができる可能性があるということを示唆しています。