2011年8月1日からIPv4アドレス移転制度が利用できるようになった。使っていない組織から必要としている組織へアドレスを移転できる制度で、在庫枯渇後のアドレス需要に応えるものだ。移転元と移転先の両方の組織が日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)に申請を出す必要があるが、金銭的な取り引きを含む移転の条件についてはJPNICは関知しない。

 日本国内を受け持つアドレス管理団体(レジストリー)のJPNICは、これまではIPアドレスの移転を認めないという立場をとってきた。正確に言うと「JPNICが許可しない移転は認めない」としていたが、許可できる具体的な条件を定めずにいた。

 今回、JPNICはアドレス移転を認めるポリシーを施行。具体的な許可条件を定めた。この背景には、従来と同様に移転を禁止し続けると、「利用者同士が裏で取り引きしてしまい、アドレス管理データベースに反映されない事態になってしまう」(同社IP事業部の奥谷泉氏)ことがある。

移転元と移転先が共同で申請

 移転の手続きとしては、次のような手順を踏む(図1)。まずアドレス移転に合意した移転元と移転先の両者が1枚の「IPv4アドレス移転申請書」に捺印してJPNICに提出する。JPNICは、移転元がJPNICと契約しているか、紛争にかかわっていないか、料金を滞納していないかといった項目を審査し、問題がなければ許可を出す。そして、実際に移転元から移転先へアドレスを移転する。JPNICはアドレス管理データベースに移転結果を反映させる。

図1●IPv4アドレス移転のための手続き<br>アドレス移転の合意がしっかりと結ばれていることを示すため、移転元の組織と移転先の組織が同じ1枚の申請書に署名・捺印を施すことになっている。このほか、移転先の組織はJPNICと契約を結び、アドレスの年間維持料を支払う必要がある。
図1●IPv4アドレス移転のための手続き
アドレス移転の合意がしっかりと結ばれていることを示すため、移転元の組織と移転先の組織が同じ1枚の申請書に署名・捺印を施すことになっている。このほか、移転先の組織はJPNICと契約を結び、アドレスの年間維持料を支払う必要がある。
[画像のクリックで拡大表示]

 通常、JPNICへの申請には電子メールを使うが、今回の移転申請書には紙を使い、さらにわざわざ1枚だけにした。その理由は、両者が直接交渉して合意が取れていることを示せるからだ。「最も回避すべきなのは、両者の合意についてトラブルが起こり、どちらがアドレスを管理するのかあいまいになってしまうこと」(同社IP事業部の佐藤晋課長)という。なお合意の条件については、金銭のやり取りを含めて、JPNICは関知しない。