スマートフォン/タブレットの性能向上は著しい。以前、知っておきたいスマートフォン/タブレットのプロセッサ動向という特集で、スマホ/タブレットのプロセッサを解説した。この特集ではスマートフォン/タブレットの今後の方向性を知るため、各社のロードマップについて解説する。進化の方向性の一つは、処理性能向上のためのさらなるマルチコア化。もう一つが、例えば音楽再生用プロセッサ、暗号化処理用プロセッサなど専用プロセッサを複数搭載する「ヘテロジニアスマルチコア」化である。

スマートフォンやタブレットに使われるプロセッサとは?

 スマートフォンやタブレットに使われるプロセッサとしては、大きくARM系のプロセッサと、Intel Atom系のプロセッサに分けられる。また、過去には、薄型ノートPCなどに搭載するプロセッサを採用したタブレットも存在した。

 スマートフォンやタブレットは、オペレーティングシステムの違いにより、大きく3種類に分けられる(表1)。もちろん、そのほかのシステムもあるが、現在メジャーなのはこの三つである。この表には、あえてクラムシェル型のノートも入れた。CPUの勢力図という点では、ノート型を入れた方が市場を正しく見ることができるからだ。

表1●オペレーティングシステムの違いにより大きく3種類に分けられるスマートフォン/タブレット
この表には、あえてクラムシェル型のノートも入れた。CPUの勢力図という点では、ノート型を入れた方が市場を正しく見ることができるからだ。
  Apple系 Microsoft系 Google系
システム ノート   MacOS   Windows 8   ChromeOS
タブレット iOS   Android3.x  
スマートフォン Windows Phone7   Android2.x
プロセッサ ARM x86 ARM x86/ARM ARM/x86他 Atom(x86)
メーカー Apple社のみ スマートフォン系 PC系 スマートフォン/PC系 PC系

 スマートフォン/タブレットのCPUでは、圧倒的にARM系が多い。というのは、もともと携帯電話では、ARM系のプロセッサが大きなシェアを占めているからだ。しかし、ノートなどを含めると、Windowsが動作するx86系のプロセッサのシェアを無視できず、全体で見ると両者が拮抗している。こうした中で、マイクロソフトが次期WindowsでARM系のプロセッサに対応し、タブレットで利用しようとしている。現在の拮抗している状態が変わってくる可能性もある。

 一方、Androidはアプリケーションの実行環境としてはCPUのアーキテクチャーに依存しない。仮想マシンコードを利用するJavaを使って記述するためである。原理的には、x86系プロセッサを使ったシステムでも構築可能だ。また、Googleが提案するAndroidを使ったGoogle TVでは、Atom系のプロセッサが採用されている。

 ここでは、ARM系を対象とし、それぞれのロードマップを見ていくことにしよう。