IFRSの任意(早期)適用を目指す双日は、全社で進めるIFRS対応に先駆けてERPのバージョンアップを実施している。ただし、固定資産管理などIFRS適用時に大きな影響を受けると見込まれる部分は、IFRSを意識して作業を進めた。

IFRS対応とは別個に実行

図●双日がERPパッケージをバージョンアップする際の方針
図●双日がERPパッケージをバージョンアップする際の方針
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 双日が進めているERPパッケージのバージョンアップで特徴的なのは、全社のIFRS(国際会計基準)対応プロジェクトとは完全に切り離して進めたことだ()。バージョンアップが先行していたとはいえ、IFRS対応プロジェクトと同期を取ることもできたが、あえてそうしなかった。「ERPのバージョンアップを確実に進める」(赤司CIO補佐)ためだ。

 バージョンアップを全社プロジェクトの一環として実施すると、マネジメントが難しくなる恐れがあった。IFRS対応の要件を取り込むためにプロジェクトの担当者を巻き込む必要があり、関係者が多くなるからだ。

 ITコストを削減するためにも、着手は早いほうがよかった。システムに関連したIFRS対応の要件が全社プロジェクトから出てくるのは、早くて11年度以降だ。バージョンアップを待つ間、ERPのサポート料率が高いままになってしまう。

全社のIFRS対応を支える

 IFRS対応プロジェクトとは別に実施したとはいえ、IFRS対応を意識して作業を進めた部分もあった。IFRS適用時に大きな影響を受けると見込まれる固定資産管理がその一例だ。

 従来は固定資産管理の処理をアドオンソフトで実現していた。原則、アドオンソフトはそのまま移行する方針だが、固定資産管理については新たにパッケージソフトを導入し、そこで処理することにした。IFRSでの処理が複雑なので専用ソフトの利用が適すると判断したからだ。ERPのバージョンアップは11年1月に完了した。

 情報企画部はバージョンアップと並行して、IFRS対応の全社プロジェクトにも参加している。6月までに、IFRS対応に必要な実務規程の作成を終える予定だ。

 「最新版への移行でIFRS対応の基盤は整った。次は全社プロジェクトからの要望を受けて、ERPを基にIFRSの適用に必要なシステム対応を進めたい」と赤司CIO補佐は話す。