今回は、ブランク氏にコンタクトをしてきた学生のエピソード。ブランク氏のもとにはたくさんの電子メールが届くが、彼は特別な存在だったという。ブランク氏と面談した彼はスタンフォード大学に入学後、若くしてスタートアップ企業を研究する組織を立ち上げ、独立した。(ITpro)

 私は2010年4月に、以下のような電子メールを受け取りました。「私は、今年の秋、スタンフォード大学に入学する学生です。あるプロジェクトを手がけていたところ、多くの方からあなたにコンタクトするように薦められました」。

 私はこのような電子メールをたくさん受け取ります。きっとこの学生は、大学院生あるいは博士課程を終えた学生で、何か独自の研究や調査をしたいのでしょう。

 この電子メールは、さらに以下のように続いていました。「私がいま取り組んでいる課題とは、多くの創業者の決断の不確実性と、必要なスキルを習得する際の非効率性です。私が模索している解決方法は、ジャストインタイムで習得する方法論ということになります。つまり、関連するコンテンツや、同僚およびメンターの意見を集約し、創業者の習得期間を短縮する方法です」

実際に現れた学生「マックス」の正体

 私はとても興味をそそられました。彼はとても面白い人物のようで、しかも彼の興味対象は私も関心を持っている課題です。彼はどこの大学でMBA(経営学修士)を取ったのだろうかと考えました。

 「この取り組みは産学連携のプロジェクトなので、私はこの課題解決に関心がある学術界の人と対話したいのです。あなたのお名前は、この案件に関して頻繁にうかがっています。もしご興味とお時間がありましたら、ご連絡いただけるでしょうか」という文章でメールは結ばれていました。文末には、彼の名前として、マックス・マーマーと記されていました。

 スタンフォード大学にほど近い、メンロパークのカフェ・ボローニで彼を待っていると、幼い少年が自分はマックスだと自己紹介してきたので、「君はいくつなの」とたずねると「18歳です」と答えました。私は椅子からころげ落ちそうになりました。

 私はマックスに、「君は、どうして起業家教育に関心があるのかな」と訊ねると、彼はこう答えたのです。「僕は以前から、世界がどこに向かっているのかという、大きなトレンドに興味を持っていました。そして“Institute for the Future”や“Singularity University”といった組織で時間を費しました。その結果、世界の最大の問題は、貧困、疫病のように頻繁に取り上げられる大問題そのものではなく、それらの問題解決に携わっている人が足りないことにあると推測するに至りました。この問題を解決する方法の一つは、アントレプレナーシップが及ぼす影響を拡大し、成功した起業家の数を増やすことです。しかし、アントレプレナーシップによる影響の拡大は、“自滅”によっていまだに実現されていません」

 私は、そのときサンドイッチに全く手をつけなかったと思います。自分が18歳の時に何をしていたかを思い出そうとしましたが、何をしていたにしろ、それはマックスがやっているようなことではありませんでした。マックスは続けて「だから僕は、できるだけ多くの起業家がアイデアを実現化できる、アントレプレナーシップのエコシステム(生態系)を最適化するのことにとても興味があるのです。そのために必要なのは、方法論やツール、摩擦の体系的な低減です」

 私は自分の年齢を自覚せざるを得ませんでした。マックスは、その歳での頭の良さでは抜きん出た存在です。