VHF-High帯(207.5MHz以上222MHz以下の周波数)を利用したマルチメディア放送「モバキャス」におけるソフト事業に名乗りを挙げている株式会社mmbiは、2011年8月に番組制作説明会を実施、併せて2012年4月1日の放送開始に向けて番組企画の募集を行った。mmbiが実施した番組制作説明会には、制作会社、配給会社、版権管理会社、地上波/BS/CS放送局、広告代理店、タレント事務所、作家など番組制作に関わる担当者らが参加した。この説明会では、「モバキャス」で可能となる新しい機能やサービス、オンエアー完パケ(放送できる状態に仕上がっている完成したVTRパッケージ)や番組の搬入基準、社内のスタジオや編集設備などの説明を行った。この説明会からmmbiが想定するサービスの一端がみてとれる。そこで今回は、この説明会の内容を報告する。

 携帯端末向けマルチメディア放送「モバキャス」は、2011年7月24日に停波した地上アナログ放送の空き周波数のV-High帯を利用したスマートフォンや携帯端末向け放送サービスで、2012年4月に東名阪地域を中心に放送が始まる見込みである。モバキャスを提供するハード事業者(基幹放送事業者)は全国で1社で、既にジャパン・モバイルキャスティングに決定している。番組を制作・提供するソフト事業者(認定基幹放送事業者)は、複数事業者の参画可能であり、総務省は8月3日から同年9月2日までの間に移動受信用地上基幹放送の業務の認定申請受付を行い、mmbiは13セグメントを利用する大規模枠で申請を行った。他に競合はなく比較審査は行われず絶対審査が行われる。早ければ10月の電波監理審議会で答申が見込まれそうだ。

モバキャス成功には3つの要素がある

 最初に登壇した代表取締役社長の二木治成氏は、モバキャスサービスの成功には「全国放送サービスのエリア展開」、「端末の普及」、「コンテンツの充実」の3つの要素があると説明した。第1の全国放送サービスのエリア展開については、全く新しい送信設備を全国へ構築する。最終的には125局の放送用基地局の構築を進めているという。そして、サービスエリアは、1年目は東名阪を中心に全国大都市圏を網羅、全国世帯カバー率を73%以上としている。サービス開始3年後には90%以上、5年後には全国125局の放送用基地局により全国をカバーする放送エリアを整備する予定である。

 第2の端末の普及につては、スマートフォンを中心としたチューナー搭載モバイル端末を積極的に販売することという約束をNTTドコモから取り付けており、サービス開始5年後に普及台数を5000万台を目標としている。第3のコンテンツの充実については、「料理に例えると、器の上に素晴らしい料理作って提供することが使命であると考えている。番組制作関係者の協力得て番組を作っていきたい」とし、二木氏は会合の出席者に協力を要請した。

図1●エリア展開計画
図1●エリア展開計画
(mmbi番組制作説明会における配布資料より)
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編成・番組コンセプト

 mmbiが提供するサービスは、従来の放送とは視聴スタイルが異なる。つまりスマートフォンがターゲットデバイスであることからディスプレーが小さく、一般的なテレビの「ながら視聴」ではなく、昼間は暇つぶしで「ちょっと見」、深夜は目的志向でじっくりみる「独り見」というスタイルになる。そこで、編成統括部ゼネラルマネージャーの原田由佳氏は、「従来の放送とは異なる部分を意識した上で番組作りや編成を考えていきたい」と説明した。

 受信端末に載せる視聴ビューワ(アプリケーション)については、mmbi側で設計を行っている。サービスを載せるユーザー・インタフェースのデザインを「番組制作側と一緒に作成でき、新しい視聴スタイルを提案できる」という。原田氏は、「既存の通信、既存の放送を組合わせて、新しい視聴スタイルをユーザーに提案していく」とした。また、通信経由で様々なコンテンツを得られる状況であることから、そうしたものと差異化を図るため「他メディアよりも早い新鮮なコンテンツを届けていくことをコンセプトとしている」と述べた。「新しいコンテンツを探すことなく、視聴ビューワであるアプリケーションを起動すると、既に用意されているコンテンツを受け身のユーザーでも、シンプルなユーザーインタフェースでサービスを受けることができる。同じ番組を一緒に見ているユーザーと一緒に楽しむソーシャルメディアと連携、番組提供者とユーザーとの距離をより近付けて一体として気楽にユーザーが参加できるような番組も提供したいと考えている」と番組コンセプトを説明した。