課題管理表に、どう対処すればいいか分からない「重い課題」が載せられていたことはないだろうか。例えば高いソフトウエア品質が求められるプロジェクトにおいて、納期が迫った時点で、データ連携する外部システムのインタフェース仕様が急遽変更になり、システムの機能を大幅に改修しなければならなくなったとする。その際、「一定の品質を確保しつつ、短期間で機能を改修する」という課題が発生する。

 そんな重い課題を課題管理表に載せてメンバーに任せたところで、「外部システム担当者と検討会議を開く」のようなもっともらしい解決策が書き込まれるかもしれないが、解決への道筋は示されていない。結局は解決されずに放置される可能性が高い。PMは、重い課題のまま課題管理表に載せてはいけないのだ。

ロジックツリーで課題を掘り下げる

 重い課題である場合、課題管理表に記録する前に、具体的なアクション(解決策)にまで掘り下げることが大切だ。その掘り下げテクニックの一つとして有効なのが、ロジックツリーである()。

図●ロジックツリーを使って、重い課題から具体的なアクションを導き出す
図●ロジックツリーを使って、重い課題から具体的なアクションを導き出す
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 ロジックツリーは、論理的に解決策を導き出すのに役立つツールの一つだ。これを使って、重い課題を掘り下げて具体的なアクションを導き出す方法を紹介しよう。

 まず、重い課題をツリーの最も左側の枠に書き込む。それから、「SO HOW?(それでどうする)」という問いかけをして、その答えを枝分かれさせた右側の複数の枠に書き込む。これを繰り返すことによって、具体的なアクションを探ることができる。

 具体的なアクションの探り方を、冒頭のインタフェース変更のケースで実践してみよう。ロジックツリーの最も左側の枠には、重い課題として「一定の品質を確保しつつ、短期間で機能を改修する」を書き込んだ。このケースでは、「高いソフトウエア品質が求められること」「納期が迫っていて改修に当てられる期間が短いこと」の二つが前提条件になる。改修に伴う再テストなどの品質確保をいかに時間と手間をかけずに行うかが、解決策として求められる。

モレなくダブリなく課題を掘り下げる

 最初の「SO HOW?」では、一定の品質を確保しつつ短期間で機能を改修するための手段として、「テストの効率化」と「テスト以外での効率化」に分けて考える。

 さらに「テストの効率化」を図る策として、「業務に重点を置いたテストケースの作成」と、効率化を狙った「自動テストの活用」という二つの策を導出。同様に、「テスト以外での効率化」として、「レビューの効率化」と「改修量の最小化」という策を挙げた。

 このようにして、「SO HOW?」を掘り下げ、「ユーザーに代表的なテストシナリオを作成してもらう」「シナリオベースの自動テストツールを活用し、回帰テストを行う」といったアクション(図中の左端の要素)を導き出す。その際、「テストの効率化」と「テスト以外の効率化」といった同じ列にある要素間で重要なモレやダブリがないことをチェックし、さらに左端のアクションが右端の課題の解決に結びつくものになっていることを確認する。その上で、予算や人的リソースの制約などを考えて、優先して実施するアクションを決める。課題管理表には、アクションの概要を記録し、期限や担当者を設定する。

 重い課題から具体的なアクションを導き出すこのようなテクニックは、PMとしてぜひ身に付けておきたい。

岡島 幸男(おかじま ゆきお)
永和システムマネジメント 組込技術センター センター長
1971年福井県生まれ。同志社大学経済学部卒業後、株式会社永和システムマネジメントに入社。業務系開発でエンジニアとしてのキャリアを積み、現在は主に組み込み系開発グループのマネジメントを行っている。著書に『ソフトウェア開発を成功させるチームビルディング』(ソフトバンククリエイティブ)、『受託開発の極意―変化はあなたから始まる。現場から学ぶ実践手法』(技術評論社)などがある。