企業とそのリーダーが、ソーシャルメディアとどのように付き合うべきか。そのために、企業をどう変革していくべきか。本書はそれを丁寧に教えてくれる。2005年に米国を襲ったハリケーン・カトリーナへの対応で批判を受けた米赤十字社が、ソーシャルメディアを活用することで信頼を取り戻した例など、事例が豊富に詰め込まれているのも特徴だ。

 第1部では、YouTubeに投稿された歌「ユナイテッド航空がギターを壊した」がきっかけとなり、米ユナイテッド航空が手荷物規則を改正した事例を紹介する。ソーシャルメディアの普及により「共有」という新しい文化が台頭し、企業と個人の力関係が根本的に変わったと説く。そして、企業を「オープン」にするとはどういうことかを説明する。

 第2部では、オープンにする目的として「学ぶ」「対話する」「サポートする」「イノベーションを促す」の四つを挙げ、それぞれを解説していく。さらに、ソーシャルメディア戦略を策定する時の悩みとなる「投資対効果」については、事例を基に説明する。

 最後の第3部は、原題である「オープンリーダーシップ」がテーマだ。「リーダーシップとは、率いる人と従う人との関係性であり、ソーシャルテクノロジーが新しい関係作りを持ち込むものだとすれば、リーダーシップもそれに応じて変わらなければならない」と著者は説く。オープンリーダーは、楽観的でチームプレー型リーダーが望ましく、「好奇心」と「謙虚さ」を備えるべきだという。この二つは、いつの時代でもリーダーに必要とされる資質だと評者は考える。

 評者も最近、個人的にTwitterやFacebookをよく使うようになり、企業内で活用する必要性を感じていた。本書はソーシャルメディアを単なる流行ととらえるのではなく、実際に組織に取り込む方法を教示してくれる。ソーシャルメディアに興味を持つ人だけでなく、それとは関係ない、あるいは関係したくないと思っている人も、手に取る価値がある一冊だ。

評者:村林 聡
銀行における情報システムの企画・設計・開発に一貫して従事。三和銀行、UFJ銀行を経て、現在は三菱東京UFJ銀行常務執行役員副コーポレートサービス長兼システム部長。
フェイスブック時代のオープン企業戦略

フェイスブック時代のオープン企業戦略
シャーリーン・リー著
村井 章子訳
朝日新聞出版発行
2520円(税込)