日本ユニシス 代表取締役社長 黒川 茂 氏
日本ユニシス
代表取締役社長
黒川 茂 氏

 ユーザーズ・アンド・ユニシス(U&U)──。日本ユニシスは、創業当時から顧客第一主義を貫いてきた。技術に基づく現場力と解決力でお客様に尽くし、お客様とともに発展していくことが社会的責任と考えているからだ。

 今、そのお客様から「経営課題とITの間にギャップがあって俊敏な変革や価値の創造などができない」という声をいただいている。ITに求められる役割は、以前なら事務効率を高めることだったが、現在は効率化というレベルを超え、経営をデザインするところにまで及ぶ。システムエンジニアとして金融機関に常駐していたこともある私としては、当社の現場の広がりを身にしみて感じている。

 技術の面でも、大きな変化が進行中だ。以前ならお客様の要求通りにスケジュールとコストを守って高品質のシステムをつくればよかったが、現在は、よりうまく、よりスピード感をもって、より効果的に技術を使うことも重要だ。システム更改を減らし、トラブル時の解析をスムーズにするために、個別最適化から全体最適化へのシフトを目指すお客様も増えてきた。

 このような状況の変化に呼応する形で、当社のU&Uも進化している。お客様の目線に立ち、お客様との一歩踏み込んだパートナーシップに基づきお客様の競争力を高めていくようなU&Uを私はU&U2.0と呼んでいる。この新たな本流をスピード感をもって進めていくことが当社の経営方針にほかならない。

戦略と環境に合ったITで顧客の事業への貢献に注力

 当社は、それぞれのお客様の経営戦略に合った最適なポジショニングを提案する「ITの全体最適化」に力を入れている。

ITの全体最適化
ITの全体最適化
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 一口にITと言っても、その中には様々な要素がある。これを業務の戦略性とITサービスの独自性に基づいて分類すると、「競争優位性の獲得に欠かせない独自方式のもの」から「差別化が不要で共同利用でかまわないもの」までの4つの象限にマッピングできる。現在、競争優位・独自の象限にオンプレミス(自社運用)やプライベートクラウドを使い、競争優位・共同利用の象限に戦略的製品/サービス導入、差別化不要・独自の象限にPaaS/IaaS上で自社開発、差別化不要・共同利用の象限にSaaSを使うのが定石だ。

 かつてITは競争優位・独自方式の象限だけを対象にしていたので、ITの選択肢は少なかった。銀行の勘定系システムでは、第一次オンラインのための独自開発システムがそれにあたる。その後、第二次と第三次のオンラインでは、基盤部分に当社の「FAST」や「TRITON」といったパッケージソフトを採用するケースが増えた。現在、アプリケーションについて当社の「BankVision」や「SBI21」のようなパッケージの採用例が多い。

 IT製品の選択肢が増えた結果、それぞれの特性を見極め、経営戦略と外部環境に即した使い分けが大切になる。例えば、以前なら差別化不要・共同利用の象限でよいと思われていたインターネットバンキングだが、戦略性を再定義した結果、投資信託や外国FX(為替証拠金取引)などの戦略メニューを強化して競争優位・共同利用の象限に移す金融機関が増えている。

 当社が野村総合研究所と進めている「ValueDirect」は、このインターネットバンキングの戦略化に適した共同利用サービスだ。お客様がインターネットを通してこのサービスに接続すると、取引内容に応じて勘定系や窓口販売などの既存システムに導く。無店舗型勘定系システム、情報系サーバー統合についてもIT最適化の要素となる。

 こうした使い分けを業務ごとに進めていくと、IT製品やサービスの細分化は進んでいく。戦略性が高い業務には独自開発システムや戦略的なパッケージソフト、それほどでもない業務は同業他社との共同開発、コスト重視の業務にはクラウドサービスといった使い分けだ。また、細分化した業務システムやサービスの間を連携するためにBPM(ビジネスプロセスマネージメント)が不可欠になる。日本ユニシスは、お客様の戦略と環境に合った最適なポジショニングをご提案する「ITの引越し屋」としてお客様の事業への貢献を目指す。

採用相次ぐBPOサービス 顧客企業の業績拡大に貢献

 成果は着実に上がり、お客様の業績に貢献している。一例を挙げれば、広告主募集、情報コンテンツ制作、会員管理などの一連の業務をBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスとして小売店に提供している。その中核はポイントカードの会員サービス。顧客情報を把握し、お買い得情報を載せたメールマガジンを携帯電話やスマートフォンに向けて発信し、来店や購買の意欲促進を狙っている。

 また、当社は在庫・補充計画、物流分析、在庫管理、入出庫管理、トレーサビリティーなどのシステムを使い、補充部品の集荷、倉庫での保管、24時間運用の空港からの輸送といった業務をワンストップのトータルサービスとして提供している。海外の顧客にも翌日または翌々日までにアフターパーツを届けられ、納期遵守率が向上し、顧客満足度も高まったとお客様から喜ばれている。

 日本ユニシスは、これまで蓄積してきた技術力、幅広い業務経験、IT製品やサービスに関する豊富な選択肢を武器に今後もU&Uを推進していく所存である。