ITベンダー社内にて、管理会計に関する会話
ダメな“システム屋”の会話 若手“システム屋” 「先輩、当社の管理会計に関して、ちょっと教えていただきたいことがあるのですが?」
先輩“システム屋” 「ん、いいよ。どうした?」
若手 「管理会計は、プロジェクトごとの収支を計算するのが目的ですよね」
先輩 「そうだな」
若手 「でも、私たちは管理会計システムに投入時間とかを細かく入力しているわけですから、それを基に、収支以外にも色々な指標を取れそうな気がするんですよ」
先輩 「お、良いところに気づいたな。例えばどんな指標を取れると思う?」
若手 「どのプロジェクトのどの仕事に何時間かけたかを細かく入力しているわけですから、それを基に、生産性を計算できそうですよね」
先輩 「そうだね。実はうちでも生産性の計算はしているよ」
若手 「知らなかった、そうだったんですね」
先輩 「もちろんだ。投入時間ベースの生産性は、プロジェクト別、業務別だけでなく、個人別という切り口でも見られるよ」
若手 「わ、それは怖いですね」
先輩 「個人別の生産性の推移や成長率も分かるし、個人に対する“投資収益率”みたいな指標まで見ることができるよ」
若手 「え、それ何ですか?ぜひ見せてください!」

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ダメな理由:自分の“収益性”が分からない

 あなたは、自社の管理会計の仕組みを理解していますか?自分の仕事のコストと成果は会計上、どのように把握されているかを理解していますか?今回は、“システム屋”の管理会計について考えてみたいと思います。

 企業向けのコンピュータの市場ではこれまで様々な変化が起きました。大まかには、大型コンピュータ・メーンフレーム中心の時代から、1990年代に「ダウンサイジング」をキーワードとして、ミニコンやワークステーション、そしてパソコンへと移っていきました。

 ハードウエア面のダウンサイジングと同期して、システム開発プロジェクトの規模も小さくなり、数は増えました。これもダウンサイジングの1つの側面です。

 ITベンダーのなかには、年間のプロジェクト総数が10倍以上に増えたところもあったようです。プロジェクトの数が増えれば、その分管理は難しくなります。例えば社内で年間100のプロジェクトがあったとして、その中のたった5つのプロジェクトの赤字総額が、95プロジェクト分の黒字総額を吹き飛ばしてしまい、全社の業績が赤字になった。こんな話を聞くようになりました。

 こうしたリスクを未然に防ぐために、1990年代から2000年代にかけてITベンダー各社は管理会計システムを導入し、プロジェクトごとの収支を管理できるようにしました。社内審査制度や開発管理機能を強化したのもこの時代でした。

 例えば1人の“システム屋”がAとBの2つのプロジェクトを兼務したと仮定します。計画段階ではそれぞれ0.5ずつ、つまり同程度の時間を割く予定だったのが、実際には一方のプロジェクトにトラブルが発生して計画通りに行きません。この場合、それぞれのプロジェクトへの投入時間を記録することで、この人の人件費を配分し直し、プロジェクトの収支を計算する手法が一般的です。