ユーザー企業がITベンダーを評価する視点が、大きく変わろうとしている。今回の調査で顕著に表れたのが、ITベンダーの「人」や「絆」に関連する評価項目を重視するようになったことだ。例えば、システム設計・開発にかかわる「提案力」や、トラブル発生時などの「問い合わせへの対応」などがそうである。

 顧客満足度調査では、分野ごとに8~9個ある評価項目の「どれを重視するか」を聞いている。ランキング表の重視度欄に「60」と記載されている場合、回答者の60%がその評価項目を重視していることを意味する。この重視度の変化から、ユーザー企業の価値観の変化が分かる。

 ここ数年、ITコストの削減やクラウドへの移行などが進むことで、ユーザー企業とITベンダーの関係は希薄になっていた。しかし、今回の震災の影響でそれは一変した。ITベンダーの“人間力”が問われる評価項目が、満足度を左右するようになったからだ。

 今回の調査は、東日本大震災から約2カ月後に実施した。システムの障害対応は終わったものの、電力危機の対応策やBCP(事業継続計画)の見直しなどに、情報システム部門が追われていた時期である。非常時ほど人の本音は表れるものだ。ユーザー企業はITベンダーのどこを見て評価しているのかを、分野ごとに見てみよう。

提案力とプロマネ力を重視

 まずは、ITコンサルティング/上流設計関連サービスにおける重視度の変化を見てほしい(図1)。上側にグラフが伸びている項目が、震災前の調査(前回調査)に比べて重視するようになったものである。

図1●ITコンサルティング/上流設計関連サービスの各評価項目における重視度の増減(前回調査比)
図1●ITコンサルティング/上流設計関連サービスの各評価項目における重視度の増減(前回調査比)

 上流設計関連では「提案力」が4.2ポイント、「プロジェクトマネジメント力」が3.7ポイント伸びた。これに対し「成果物の品質」は5.1ポイント下がった。これにより、提案力の重視度(46.4ポイント)が成果物の品質(40.7ポイント)を逆転した。

 今回の震災で、ユーザー各社は情報化戦略をゼロベースで描き直す必要があった。システムの節電対策や計画停電対策などに取り組む必要もあった。そのため、従来の延長線上ではないIT活用の絵を描くための「提案力」を重視したと考えられる。

 3.7ポイント増のプロジェクトマネジメント力については、「段取り」の良しあしと読み替えるとよいだろう。迅速に戦略を見直したり、BCP関連の対策を打ったりした際に、円滑にことを進められたかどうかをユーザー企業は重視したとみられる。

 システム開発関連サービスにおいても、上流設計と同様にプロジェクトマネジメント力や提案力の重視度が上がった(図2)。「最新技術への対応力」も2.1ポイント上昇した。こちらもクラウドコンピューティングやディザスタリカバリー、シンクライアントといったBCP関連の新しい製品・サービスの導入を、本格的に検討したことが背景にありそうだ。

図2●システム開発関連サービスの各評価項目における重視度の増減(前回調査比)
図2●システム開発関連サービスの各評価項目における重視度の増減(前回調査比)