スマートフォン向けの広告ネットワークを提供するノボットは、2011年9月、KDDIの子会社であるmedibaに買収された。2009年に創業したノボットは、小規模な資金を元手に数名の創業者が短期間で事業を立ち上げた「Lean Startup」企業の代表と言える。創業メンバーの小林清剛社長と野田智史COOに、日本における起業のメリットとデメリットなどを聞いた。

(聞き手は菊池 隆裕=ITpro)


小規模な資本を元に短期間で事業を立ち上げる、昨今の起業環境をどのようにご覧になっていますか。

小林清剛氏
ノボット 小林清剛社長

小林清剛氏:少額投資をする投資家やインキュベータの数が増えています。むしろ、投資家の数が多くて、投資対象のスタートアップ企業の方が足りないのではないかと思うほどです。日本は、事業を始めやすい国だなと感じます。

 一方で、イグジット(株式の売却で利益を得ること)がしにくい。IPO(新規株式公開)が難しいのと、10億~20億程度で買える会社が少ないことが挙げられます。

 最近になって、当初から世界市場を考えるスタートアップ企業が増えています。イグジットを世界市場で見付けられると選択肢が増えていいのではないかと思います。投資がある以上、出口は必要ですから。

最近になって、起業しようという熱が増してきたように感じています。

野田智史氏
ノボット 野田智史 COO

野田智史氏:数でみると、過去のブームと変わらないと思います。ただ、スタートアップを始めるときのコストが小さくなっているので、数人が事業プランに合意できれば、簡単に始められるということでしょう。ソフトウエアのプラットフォームや端末の共通化などの環境が整ってきて、製品をすぐに世界市場に出せるようになってきました。

 当社の資本金は当初100万円で、2010年4月と9月に増資しました。ほとんどが人件費です。工場や大規模な設備が必要なわけでもありません。最近、Lean Startupと言われますが、人間が1人いれば、サービスが作れる時代です。あまりお金をかけずに事業を始めるというトレンドができつつあります。

小林氏:当社を創業した2年前に比べて、インキュベータの数が増えているので、投資を受けやすくなっていると思います。加えて、スマートフォンのように急拡大している市場もあります。

 以前からの“ベンチャー”に加えて、“スタートアップ”という言葉が使われるようになったのもこの2年間ですね。スタートアップは、少額の資金を基に、数カ月で事業を立ち上げ、2年くらいでイグジットする企業として認識されるようになりました。