「AppGrooves」は、お薦めのiPhoneアプリを探し出してくれるiPhoneアプリ。開発したのは、楽天執行役員と東大助教を務め、現在はシリコンバレーでアプリと同名のベンチャー企業を立ち上げた柴田尚樹氏(写真1)である。柴田氏に、起業の場所としてシリコンバレーを選んだ理由などを聞いた。

(聞き手は菊池 隆裕=ITpro)


 小規模起業に特化したベンチャーキャピタルである米500スタートアップスから出資を受け、共同オフィスで開発を進めています。彼らの投資の特徴はどのようなものでしょうか。

写真1●AppGroovesを開発した柴田尚樹氏

 5万ドルを投資した企業に、共同オフィスで開発させて、3カ月の節目となる「Demo Day」で成果披露します。これは、基本的にはYコンビネーターと似た仕組みです。5万ドルといっても、社員が2~3人いると1年ももたないので、追加の投資が必要となります。ベンチャーキャピタル(機関投資家)やエンジェル(個人投資家)が参加するDemo Dayは、その追加投資を受けるための機会となります。

 こちらではすべてが自己責任です。共同オフィス(写真2)に入居しても、机が与えられるだけで、何をしてくれるわけでもありません。ただ、一般的には国外からやってきた人が米国でオフィスの契約をするのは難しいので、その点では楽だと言えるでしょう。

写真2●500スタートアップスが出資するスタートアップ企業が入居するビル
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 投資から3カ月経った後、基本的には、共同オフィスから出ないといけないというルールになっています。周囲をみていると、4~5人になると外に出ていくようです。ここはサンフランシスコから南に100キロメートルほど離れたマウンテンビュー市ですが、サンフランシスコ市内がいいと言って出て行く人もいます。私は、ここにしばらくいるつもりです。

最近になってLean Startupと呼ばれる、小規模の起業が注目を集めています。その背景をどのように見ていますか。

 規模の小さい企業であれば、クラウドサービスが安価に利用できるようになっています。これが、小規模の起業に拍車をかけているのは間違いないでしょう。

 500スタートアップスにいる会社の多くは、スマートフォン向けのサービスを開発しています。企業向けのソフトウエアやサービスと違うのは、営業担当の社員が必要ないところです。iPhoneアプリであればApp Storeを通じて全世界に展開できるので、エンジニアが2人もいれば事業を始められます。

なぜ、日本ではなく、シリコンバレーで起業しようと考えたのですか。

 日本向けのサービスであれば、日本で起業してもいいと思います。しかし、グローバル市場に行こうと思えば、日本で起業するのは難しいと考えました。グローバル市場で勝負しようとする企業にとって、シリコンバレーほど良い場所はほかにありません。これまで、シリコンバレー以外から出て、グローバルにサービス展開できた企業はどれほどあったでしょうか。