筆者が子供の頃、日本でも比較的よく停電した。しかし、成長するにつれてほとんど停電はなくなった。しかし、筆者が現在住んでいる米国では、今でも停電は決してまれなものではない。さすがに長時間に及ぶものはそれほど頻繁には起こらないのだが、短いものは時々ある。

 9月8日から9日にかけて起きたサンディエゴ地域での停電は、中でも大規模なものだった。最大12時間にわたってサンディゴ地域全域、アリゾナ西部とメキシコ北部一帯の400万人が影響を受けた。日本でも簡単に報道されたが、この大規模停電について分かっていることを報告する。電力事情が安定しない現在の日本でも起こり得る大規模停電として、その原因と対策について注目すべきものである。

 本稿執筆の時点では、原因の本格的究明はまだなされていないが、どのようにして大規模な停電に至ったかは大体分かっている。大規模ではないが、ハリケーンなどの自然災害やその他の理由で原因がはっきりと分かっている小規模の停電は毎日のように全米のどこかで発生している。しかし、この規模の停電は2003年に発生したニューヨークを含む北東部の大規模停電以来である。

 この時に影響を受けたのは米国北東部とカナダのオンタリオ州で、約5500万人に影響が出て、完全復旧に最高で2日間を要した。これに比較すると規模は小さいとはいえ、サンディエゴはロサンゼルスに次ぐカリフォルニア第2の都市であり(ロサンゼルス:385万人、サンディエゴ:125万人、サンノゼ:93万人、サンフランシスコ:74万人)、全米でも第8位である。そのような都市で起きた大停電は、空港の閉鎖、信号の停止による交通網の混乱、下水処理されていない汚水の海への排出など市民生活に大きな影響を及ぼした。