情報システムを開発するエンジニアなどの技術者には、コミュニケーションが苦手な人が多いといわれる。しかし関心を持っている話題には、自ら進んで知識や考えを開陳しようとするエンジニアも多い。

 そんなエンジニアの特性を生かした施策を展開し、エンジニア同士のコミュニケーションを促進して部門全体の意欲向上に成功している企業がある。携帯電話向けゲームサイト「モバゲータウン」などを運営するディー・エヌ・エーだ。2009年秋から、「テックトーク」と呼ぶエンジニア同士の交流会を数カ月に1回の頻度で開いている。あくまで自由参加だが、同社に所属するエンジニアの約半数の50人弱が毎回出席している。

スピーチで共通の話題を作る

ディー・エヌ・エーのテックトークの光景
ディー・エヌ・エーのテックトークの光景
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 テックトークは、「ライトニングトーク」と呼ぶスピーチから始まる。スピーチを担当するエンジニアは各回数人、多い時で10人ほど。それぞれが関心を持つ技術などをほかの参加者に約5分間で紹介する。続いて、スピーチで話題になった技術を中心に、参加者同士がアルコールなどの飲料とつまみを片手に、1時間~1時間半ほど、ざっくばらんに話し合う。

 最初のスピーチの狙いは、参加者に共通の話題を提供することで、会話のきっかけを作りやすくすることだ。技術の話題で盛り上がるうちに、自然に横のつながりが生まれてくる。

 テックトークを取り入れた能登信晴システム統括本部技術戦略部部長は「エンジニアは押しつけられたと感じると著しくモチベーションを下げる」と話す。そこで参加のハードルを下げ、エンジニアが主体的に参加しやすい雰囲気作りに努める。

 スピーチ時間が5分間と短めなことも気軽さを演出する工夫の1つ。プレゼンテーションが苦手なエンジニアにも「5分くらいならしゃべれそう」と前向きになってもらう狙いがある。プレゼン中にプログラムを動かしてみせることも認めている。プログラムが動くと、見る側のエンジニアたちも盛り上がりやすく、「エンジニアの共通言語はプログラムなのだと実感する」(能登部長)。また、アルコールやつまみ類は参加者から会費を500~1000円ほど徴収して用意する。大げさにならないように、あえて会費制にしている。

 能登部長は「テックトークを通じてエンジニア同士の交流が広がったことで、開発効率も向上した」と胸を張る。例えば広告向けシステムを開発するエンジニアが、広告効果をグラフ表示するプログラムをテックトークで披露したところ、その優秀さに気づいたモバゲータウンのエンジニアがその場で「使わせてほしい」と持ちかけ、直ちに成立したことがある。