東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドには「キャスト」と呼ぶパートやアルバイトの従業員が約1万8000人いる。社員の9倍も在籍するキャストがいなければ、年間2500万人ものゲストを迎えられない。このキャストのやる気を高めるため、同社はテーマパークを使った様々なイベントを用意し、年間スケジュールを配布する。

 2010年度は8~9月にキャスト同士で合計20万通ものメッセージを専用カードで送り讃え合う「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」を実施する。9~10月は園内の湖で開園前の早朝に職場対抗のカヌーレース。そして1月には社員がキャストを園内でもてなす「サンクスデー」など、目白押しだ。サンクスデーやスピリット・オブ・東京ディズニーリゾートのアワード授与式は閉園後の夜にテーマパークを使って開催する。

 なかでも、真冬の夜に盛大に行うサンクスデーはキャスト向けのイベントとしては最大規模だ。毎年恒例の行事だが、事務局は1年半も前から日時を決めて段取りし、当日は夜7時に一般のゲストが帰った後、キャスト向けに“再オープン”する。そして社員がキャストに「ありがとう」を伝える。

 サンクスデーの1カ月ほど前に社員には自分の持ち場が伝えられ、ある社員は「スペース・マウンテン」などのアトラクションを操作し、別の社員はポップコーンや土産物を販売する。社長さえもテーマパークのコスチュームに着替えてキャストを接客。キャストが社長の姿を見つけると、大勢集まってきて人だかりができる。この日ばかりは、社長はミッキーマウスに負けない人気者になる。

ありがとうを伝える準備をする

 社員の多くは現場に出ていた経験があるものの、本職のキャストたちに操作ミスをしたり手抜きをしたりしていると思われないよう、アトラクションやレジの操作を練習したうえで臨む。コスチュームがちゃんと着られるように、ダイエットしてからサンクスデーに出る社員もいるほどだ。

社員がキャストを讃えるためにテーマパーク内で渡す「ファイブスターカード」
社員がキャストを讃えるためにテーマパーク内で渡す「ファイブスターカード」
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 そんな社員の姿を一目見てからかおうと、キャストたちは自分の上司に駆け寄る。そしてアトラクションの前に立つ社員に「お客様は何名様ですか?」と聞かれると、「47人」などとわざと無茶な要望を出して社員を困らせてみる。それでも社員は笑顔を絶やさず、キャストたちをもてなす。

 サンクスデー以外にもオリエンタルランドは頑張っているキャストを讃えたり喜ばせたりする仕組みを用意している。その1つが「ファイブスターカード」だ。社員は常にカードを携帯し、素晴らしい対応をしているキャストを見かけると、一言コメントを添えてカードを渡す。思いがけずカードを手渡されると、キャストは大喜び。年4回あるファイブスターパーティーにも参加できる。