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 みなさんは、ご覧になっているだろうか。今年1月から11月まで放送予定のNHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」には、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康という戦国時代の3巨頭が登場している。

 もし仮に、この3人が現代のIT業界で働いたとしたら、いちばん成功するのは誰だろうか?

 筆者の偏見かもしれないが、「家康」と答える人は何となく少なそうだ。これまた何となくなのだが、ひょっとするとベンチャー企業では「信長」と答える人が多いかもしれない。それでもITproで連載している識者の意見を総合すると、最有力は「秀吉」である。

「戦国時代の最強PMは豊臣秀吉である」と奥井規晶氏

 秀吉をプッシュする識者の筆頭は、インターフュージョンコンサルティング代表取締役会長、奥井規晶氏。以前の連載「プロマネ必修『人間力』育成講座」第1回において、3武将を「改革・改善行動」「企画力」など5項目で評価した。その結論として「5項目すべてに◎がつくのは秀吉1人。戦国時代の最強PM(プロジェクトマネジャー)は、豊臣秀吉である」と断言している。

 その後も第2回では尾張清洲城の修理で人足たちを統率したやり方、第3回では竹中半兵衛への三顧の礼、第5回ではゴマスリぶりに触れつつ、人を動かす力を持つリーダーとして奥井氏は称賛を惜しまない。

 別な連載でも、係長クラスのSEからの「本質をきちんと考えない、バカな上司や経営陣に失望しています」という悩みに答えて、蜂須賀小六らを動かした秀吉の「墨俣(すのまた)の一夜城」のエピソードを引き合いに、「改革活動をするのには仲間を作ることが大事」と説いている。

【プロマネ必修「人間力」育成講座】
  第1回 欧米の真似では失敗、日本的PMの姿をつかめ

  第2回 技術偏重が生産性を阻害、改善の極意を製造業に学べ

  第3回 ロジカルコミュニケーションで「あいまいさ」を排除しよう

  第5回 「人脈」と「気配り」を武器に、よみがえれ中年マネジャー

【奥井規晶の悩むなら聞け!】
  本質をきちんと考えない、バカな上司や経営陣に失望しています。

「部下に夢を抱かせたリーダー」と松田次博氏

 実はITpro連載陣の中にはもう1人、秀吉の大ファンがいる。「間違いだらけのネットワーク作り」でおなじみの松田次博氏だ。毎年4月の第一土曜日は京都で研究会を開催し、翌日曜日は秀吉を祭った豊国神社にお参りするのがここ数年の恒例になっているという。連載でもたびたび、豊国神社や、正妻、北政所が創建した高台寺を訪れたときのことに触れている。

 今回の記事執筆に当たり、秀吉の魅力はどこにあるのか、松田氏に直接お伺いしてみた。即座にこのようなお返事をいただいたので、ご紹介したい。

 私はプロマネにとって大事なことは、プロジェクトの目的とビジョンを明快に示し、「このプロマネについて行けば、きっとそれが実現する」と信じさせるアイデアとパワーを見せることだと思います。

 秀吉くらい明快に、「天下統一」という目的を示し、その明るいエネルギーで部下に夢を抱かせたリーダーはいないのではないでしょうか。晩年は朝鮮出兵や秀次一族の惨殺という、狂ったようなことをしでかしましたが、正常な時代の秀吉はすばらしいプロマネだったと思います。


【間違いだらけのネットワーク作り】
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  間違いだらけのプレゼンス

「人の動かし方を学べる」と芦屋広太氏

 そしてもう1人、やはり秀吉の「人の動かし方」を高く評価する識者がITpro連載陣にいる。連載「一つ上のヒューマンマネジメント」でおなじみの芦屋広太氏だ。かつての連載「芦屋広太氏に聞く---『人を動かす』技術がなぜ大切か」の中では、人の動かし方で影響を受けた歴史上の人物として斎藤道三、豊臣秀吉、北条早雲の3人の名を挙げている。

【芦屋広太氏に聞く---「人を動かす」技術がなぜ大切か】
  第2回 「自分中心」の行動は止めるべき

 秀吉の人物像を普通に想像すると、人たらし、ゴマスリ上手といったムードメーカー的な性格ばかりが思い浮かびがちだ。しかし前述の識者らは、単なる性格の良しあしではなく、目的とビジョンを直接語りかけ、これと見込んだ家臣や労働者には褒美を約束し、共に現場で体を張って見せる行動力が大きな武器だったと考えている。

 おだての効かないコンピュータを相手に格闘する手をたまには休め、時には秀吉の登場するドラマや小説などに触れて秀吉の家臣らの心境を想像してみてはどうだろうか。それも成長するきっかけを与えてくれるかもしれない。