金融庁は2011年8月25日、企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議を開催した。6月23日の自見庄三郎金融担当大臣のIFRS(国際会計基準)適用の見直し発言を受けて2回めの審議会となる。

 6月30日の前回(関連記事:IFRS強制適用に賛否両論---企業会計審議会総会報告 )から臨時委員を大幅に増員。日本企業に対してIFRSの適用を推進する立場の委員、慎重な姿勢を見せる委員、審議会での議論の進め方に注文をつける委員らがそれぞれの立場から意見を述べるにとどまり、前回と同様に議論はまとまらなかった。再開から2回めとなる企業会計審議会の様子をお届けする。


 企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議は、30人以上が参加する巨大会議となっている。前回から、総会傘下の企画調整部会に大量の臨時委員が追加になった結果だ。委員で満員の会議室の傍聴席は前回と同様、開始15分前にほぼ満席となった。

 冒頭で自見庄三郎金融担当大臣が挨拶した。自見大臣は2時間近くに及んだ議論の最後まで審議会に参加したのも前回と同じだ。2010年に自見大臣が金融担当大臣に就任して以来、企業会計審議会や傘下の部会は何回か開催されたが、自見大臣が最後まで出席したことはない。IFRSの強制適用を巡る議論に関心を寄せていることがうかがえる。

 冒頭の大臣挨拶では、現時点でIFRSの強制適用としている上場企業の連結財務諸表に限らず、「非上場企業や中小企業、税法、会社法、金融資本市場などを踏まえて議論・検討してほしい」と訴えた。さらに国際情勢や日本としての国益の確保に触れて、「日本の経済が元気になるように議論してほしい」と話した。

 その後、事務局を務める金融庁からIFRSをとりまく国際情勢や今後の審議会の進め方について説明。その後、委員による議論に移った(関連記事:IFRS強制適用について11論点を提示、企業会計審議会が開催 )。

IFRS強制適用は日本企業の強さを損なう

 前回と同じように、各委員はそれぞれの立場から意見を述べた。前回と今回の両方で発言した委員の多くが、今回も自分の立場を改めて主張した。

 IFRSに対して慎重な姿勢を見せたのは、製造業などの企業を中心とする委員である。前回から企画調整部会に臨時委員として加わった三菱電機の佐藤行弘常任顧問は、「各国の事情を把握することなしに、総論としてIFRSを受け入れようとする議論は、日本の方向性をミスリードしかねない」と指摘。「企業の目的はゴーイングコンサーンである。企業にとって意味のある会計基準は何かを考えるべきだ」と強調した。

 その上で「戦後、日本の成長を支えてきた実現主義や取得原価主義、確定決算主義といった日本の会計基準(日本基準)を堅持してほしい」と主張。そのためには、日本のIFRSの強制適用の方針を示した「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」で提示している「連結先行」の考え方を「お蔵入りさせるべき」とした。

 同時に今後の議論の進め方について、「デュープロセス(適切な手続き)の観点からも、総会と企画調整部会を同時に開催するのではなく、企画調整部会単独で開催すべきだ」と提案した。「時期よりも議論を尽くすことを優先すべき。(中間報告で適用可否判断の目途として挙げている)2012年という期限はここでとどめておき、新たな作業計画を作ることが大切」と主張した。