「今期末で2~3割、2015年時点では半分近くを無線LANなどにトラフィックオフロードしないと、携帯網がオーバーフローしてしまう」(KDDIの田中孝司社長)---。

 市場のスマートフォンやモバイルブロードバンドへの急激なシフトによって引き起こされたモバイルトラフィックの急増は、世界中のモバイル通信事業者の頭を悩ませている。その打開策として、モバイル通信事業者による携帯網から無線LAN網へのトラフィックオフロードの取り組みが盛んになってきた。

モバイルトラフィックは1年で2倍増という総務省の調査結果

 では一体、どんな勢いでモバイルトラフィックは増えているのか。総務省はその実態を把握するために、2010年から日本の移動体通信事業者5社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・モバイル、UQコミュニケーションズ)と協力して、パケット通信のトラフィック量の調査を実施している。各移動体通信事業者の中継パケット交換機(GGSN)で計測・集計する形だ。

 その最新調査結果が2011年8月末に公表された(関連記事)。それによると、2011年6月の月間延べトラフィック量は4万23テラバイト。1年前の2010年6月の2万386テラバイトと比べて、1年間でトラフィック量は約2倍に急増していることが明らかになった(図1表1)。

図1●日本の移動通信事業者5社の月間延べトラフィック量<br>原則四半期ごとに調査する方針だが、2010年12月は未調査。1年間でトラフィック量が2倍になっていることが分かる。
図1●日本の移動通信事業者5社の月間延べトラフィック量
原則四半期ごとに調査する方針だが、2010年12月は未調査。1年間でトラフィック量が2倍になっていることが分かる。
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表1●月間通算トラフィック量の内訳
表1●月間通算トラフィック量の内訳
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 前年の調査では、2010年6月から2010年9月にかけてのトラフィックの伸びは13.2%(関連記事)。年率換算すると1.64倍であるため、伸びが加速している形になる。

 なお、世界では日本以上に激しいトラフィックの伸びを示している。データ通信の利用で先行した日本に対し、世界では、スマートフォンへの市場のシフトによって初めてデータ通信市場が掘り起こされたケースがほとんどだからだ。

 米シスコが2011年2月に発表した「Cisco Visual Networking Index:Global Mobile Data Traffic Forecast Update, 2010-2015」によると、2010年の全世界のモバイルデータトラフィック量は、1カ月当たり237PB(ペタバイト)であり、前年比2.6倍もの伸びを示した。同調査の予測では2010年から2015年にかけて世界のモバイルデータトラフィック量は約26倍も増加し(年率で92%増)、1カ月当たり6.3EB(エクサバイト)に達するとする。