グランプリ

 「当社は今、真のグローバル企業へ変革しようとしている。そのために、事業変化に素早く対応できるシステムが必要だった」。グランプリを受賞したオムロンでグローバルプロセス革新本部長を務める吉川浄執行役員は、基幹系システム刷新の意義をこう語る。

 オムロンの売上高に占める海外比率は現在50%。これを2020年までに70%まで引き上げる計画だ。ところが、日本の本社と海外拠点とで一本化されていない30年前の基幹系システムが、「グローバル化する事業革新の足かせになっていた」(吉川執行役員)。

 そこで同社は、約30年ぶりとなる基幹系システムの再構築と業務プロセスの改革を一気に進めるプロジェクトに着手。2013年度末までに、新しいプロセスと新システムに完全移行する。自社の強みを徹底的に分析してグローバルで通用するプロセスとシステムに変革する。さらに、プロジェクトを通してシステム企画・開発力を高める取り組みが評価され、グランプリに輝いた。

コアとノンコアを明確に

 オムロンにおけるプロジェクトで注目したい点は、二つの「選択」である。一つは、業務プロセスをその重要度に照らしていかに仕分けるか。もう一つは、パッケージ製品とスクラッチ開発をどう使い分けるか、である。

 これを実践するために同社が用いた方法が、「CMO(Common、Module、Option)」と呼ぶ三つの指標を使ったプロセスの仕分けである。商品開発などで用いられる手法を、自社のコア/ノンコアを明確にする手法として採用した。

 Commonは製造業で共通な部分であり、オムロンが強みを出せないプロセスである。これは全社的に共通化を進める。競争力になるプロセスはModuleとする。

 例えば、「注文を受ける」や「受注データを入れる」といったプロセスはCommonだが、「顧客とのリレーションを築く」はModuleにする、といった具合だ。Optionには、事業部や国の違いで生じる差分をまとめた。

図1●「CMO」の評価軸によるプロセスの仕分け方
図1●「CMO」の評価軸によるプロセスの仕分け方
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 新システムのアプリケーションは、CMOで分類したプロセスを組み合わせて構築する(図1)。SOA(サービス指向アーキテクチャー)をベースにしたシステム基盤を構築し、その上で機能やプロセスを連携させる。

 CMOの考え方は、そのままシステムの実装へつないだ。新システムは、ERP(統合基幹業務システム)パッケージと、Javaアプリケーションから成る。Commonの機能はERPパッケージで実装。ModuleとOptionについては、スクラッチで開発した。

 SOAでは、アプリケーションの処理単位を“サービス”として定義する。「納期回答」や「在庫」といったサービスは、ESB(エンタープライズ・サービス・バス)で連携させる。

 メインフレーム上で稼働している旧システムのアプリケーションやスクラッチ開発したアプリケーションには、SOA基盤からアクセスできるようにする。これにより、段階的に新システムへ移行することを可能にした。