自宅などにある私物のパソコン(PC)から業務システムを利用できれば、社員にとって利点は多い。だが、セキュリティ対策はどうすべきか。日経コンピュータ誌が勧める方法は、私物のPCを「シンクライアント化」すること。私物PCから会社のPCを遠隔操作できるようにするのだ。その具体的な実現方法は3パターンある。

 私物のノートPCやデスクトップPCの業務利用を認める場合に考慮すべき点は、スマートフォンより多い。ウイルス対策ソフトの導入やファイル交換ソフトの利用禁止、VPN(仮想私設網)利用による社内システムへの接続など、基本的な対策方法は会社支給のPCと同じだ。

 とはいえ、対象が私物であるため、どこまで会社が関与すべきか、また強制できるかの線引きは難しい。「個人の協力を得ながら、働き方を変える」という目的を実現するには、個人の権利を侵害せずに、会社の情報を守ることを両立させる必要がある。

 これを実現するために日経コンピュータ誌が勧める方法は、私物PCをシンクライアント化することだ。シンクライアント化した端末を使い、会社のPCを遠隔操作する。私物PC上に仕事の画面は表示されるが、それぞれは論理的に切り離されている。そのため、会社のPCのデータが私物PCを通じて社外に漏えいすることもなければ、私物PCにある個人の写真やメールが会社側に漏れることもない。テレビのスイッチを入れるような感覚で手軽に会社のPCと私物のPCを切り替えられるため、従業員の負担も少ない。

 東日本大震災が起きる前までは、シンクライアントとして使うPCも会社が支給するケースが多かった。しかし、震災を機に「そもそもPCを配布できない」ことに直面した企業は多く、私物PCの利用解禁に踏み切る企業が相次いでいる。この夏の節電対策の一環で在宅勤務制度を導入する企業では、経費を抑えるために私物のPCをシンクライアント端末として使うケースもある。

シンクライアント化は3パターン

 私物のPCをシンクライアント化する方法は、どのPCを遠隔操作するかによって三つのパターンに分かれる(図1)。一つめは会社の自席にあるPCにログインして遠隔操作する方法、二つめはクラウドサービスであるDaaS(デスクトップ・アズ・ア・サービス)を利用する方法、三つめは自社内に仮想PC向けのサーバーを設置する方法である。

図1●私物のPCをシンクライアントとして利用する方法
図1●私物のPCをシンクライアントとして利用する方法
個人所有のPCが内蔵するハードディスクにはデータを残さないため安全である。
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 いずれの方法を採用する場合でも、私物のPCをシンクライアント化するツールが必要になる。NTTアドバンステクノロジの「WarpDesk」のようにCD-ROMからソフトをインストールするものや、ビズモバイルの「L2Connect Valente」のようにUSBメモリー型のデバイスを使ってPCをシンクライアント化するものなど、さまざまな製品がある。

 以下では、図1に示した私物のPCをシンクライアントとして利用する三つのパターンについて、その仕組みやメリット/デメリットについて紹介する。